【ホテル総支配人リレーインタビュー】第17回 ANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパ総支配人 高良真理氏

  • 2022年11月4日

コロナ禍を機にオペレーション体制を強化
世界一の温泉リゾートへ向けて前進中

-地元での人材の採用に苦労することはなかったですか。

高良 地方でのラグジュアリーホテル経験者の採用は本当に難しく感じていますが、地元採用については幸運なことに、開業時に想定していたよりも苦労はありませんでした。というのも大分の人たちは地元愛が強く、都会へ出て行ってもいずれは故郷に帰って地元に貢献したいと考えるからです。採用者にも地元を離れて色々な企業でキャリアを積んだり、堪能な語学をいかし、いずれ海外で働きたいという希望を持っている優秀な人材がたくさんいます。これまではスキルを活かせる場がなく、このホテルの開業をきっかけに帰って来たのです。

 地元で採用した人材を育てるのに5年は必要です。すでにスーパーバイザーになった者もいて、そういう人材がマネージメントチームに加わることが重要です。ホテルの場合、総支配人以下のマネージメントチームは数年間で入れ替わることが多く、新しいリーダーが新しい風を吹き込みます。そのような構造の中で、地元の人材がマネージメントチームの一員に加わっていれば、ホテルの文化を受け継ぎながら新しいリーダーがもたらす風をうまく融合させることのできる体制ができると期待しています。

-地元採用では立命館アジア太平洋大学(APU)の卒業生も多く採用しているのですか。

高良 APUの卒業生は日本人も留学生も採用しています。学生時代からこの地域を良く知っているのが彼らの強みです。海外へアプローチする際には、海外の生活者の目線で見た別府や大分の強み、魅力を彼らに教えてもらえます。APUに感謝したいのは人材供給の面だけでなく、外国人を受け入れる環境を根付かせてくださっていることです。海外から赴任するマネジメントやスタッフが働きやすく暮らしやすい町であることは、とても重要なポイントです。

-ANAインターコンチネンタル石垣リゾート秋間友総支配人からの質問です。
今までホテルで勤めてきたキャリアのなかで、他の業種への転職を考えたことはありますか。また、もし今そういった考えや悩みを持っている若手ホテリエがいたらどのような声を掛けますか。

高良 転職を考えたことは1度あります。入社4年から5年目のまだラインスタッフだった27、28歳の頃でしたが、将来の夢は何となくあってもビジョンに基づいた絵が描けない状況に疑問を感じ、女性としてより安定した道を進むべきか、長く活躍できる職場へ行くべきかなど悩んだ挙句、転職を決心して最終面接まで進んだ企業で、相手の社長にこう言われました。「君はうちの仕事にきっと飽きてしまうと思う。毎日違う客が来て日々異なるチャレンジをするから君が輝いていることを自分で気付いていないのでは。採用はするが、君自身もう一度考えてみたらどうか」。改めて考えた結果、ホテルに残りました。

 若手が悩みを抱えている時には、自分の体験も交えて話をして、1人で悩む必要はないとアドバイスします。自分で抱え込むのではなく声に出して相談すれば、必要なフィードバックをくれる人が必ず周りにいる。しかし話さなければ協力は得られませんし、新しい発見もありません。

-読者へメッセージをお願いいたします。

高良 このホテルはようやく女性がマネージメントチームの半分を占めるようになりましたが、業界全体で性別や国籍、年齢などに左右されない職場環境作りを進めていただきたいです。異なるバックグラウンドを持つ者同士が互いに支え合い、認め合う文化を協力して作っていきたいですね。その意味で日本は後れを取っています。IHGはダイバーシティ&インクルージョンの取り組みに力を入れており、その一環で女性総支配人の育成プログラム「Rise」を設けています。私もその卒業生の1人ですが、日本の現状を海外で説明する時には悔しい思いです。女性を推すのはなく、本当の意味で多様性を受け入れる土台を作るためにぜひアクションを起こしてほしいと思います。

-最後にリレーインタビューのバトンを渡される方のご紹介と、高良様からその方へのご質問をお願いいたします。

高良 コンラッド大阪の総支配人、マルコ・ティラフェリさんです。ダイバーシティ&インクルージョンを、コンラッドブランドとして、さらにご自身として、ホテルチームへ実装させるために意識して取り組んでいることをぜひ教えてください。

-ありがとうございました。
※訂正案内(編集部 2022年11月7日09時50分)
訂正箇所:2ページ第8段落第1文 数値表記
誤:国内60%を

正:国内70%を

お詫びして訂正いたします。