新春トップインタビュー:日本旅館協会会長 針谷了氏

訪日客増でネット活用、経営改善の取り組みも
民泊は「イコールフッティング」の原則で

-民泊に関する検討が進められていますが、お考えをお聞かせください

針谷 我々は空き部屋を貸し出してホームステイのように受け入れる民泊までは反対はしていない。しかし実態は、マンションなどの複数の空き室を1名で借り、ビジネスとして外国人などに貸し出す形態が多い。ビジネスとして空きマンションを提供することは、我々の事業とどこが違うのか。そんなことが可能であるならば、旅館業法はいらないという話になるだろう。旅館業法で定める1業態として「簡易宿所営業」があるので、民泊をおこなう場合はその許可を取得すればいいのではないか。

 住宅地での旅館建設は住環境を阻害する懸念から、法制度で規制されているが、民泊では住宅地のなかで営業しようとするものだ。しかし、マンションのごみ問題や騒音、治安への懸念などが問題化している。さらに、民泊の場合は対面での宿泊者の確認やパスポートのチェックをしていないが、そういう状況で国民の生命や財産は守ることができるのか。我々が求めるのは「イコールフッティング」で、規制を強化するか緩和するかは国の方針次第だが、民泊と既存の宿泊施設のハードルについては両方同じにするべきだ。

 また、仲介業者は問題が発生した際はホストに責任があるとしているが、仲介業者に責任がないわけではない。日本でビジネスをする以上、日本の法律を守るべきだ。また、消費税や法人税などの税金も支払うべきではないか。

 ホームステイでも最低限の規制は必要だと考えている。海外ではホストが部屋に隠しカメラをつけるケースや、鍵を開けて自由に部屋に入り、宿泊者に危害を与えるケースが発生している。利用者の生命や財産を守るという見地から、何が必要かを考えるべきだろう。


-民泊は宿泊施設不足の課題解決に役立つという意見もあります

針谷 「宿泊施設の逼迫」という意見は実態に伴っていない。例えば楽天トラベルで検索してみた、京都駅付近の宿泊施設は15年11月26日の土曜日でも19軒空きがあった。

 また、「民泊を利用して地方創生を」という主張はあるが、需要がないのに供給を増やしても無理だろう。宿泊施設の多様性の問題ではなく、地方の魅力をいかに伝えるかが重要だ。県単位ではなく、もう少し広域でのプロモーションをおこなっていくべきではないか。昨年7月に、全国の9つの運輸局に「観光部」が設置されたが、そのような単位で取り組むべきだと思う。


-ありがとうございました