新春トップインタビュー:日本旅館協会会長 針谷了氏

訪日客増でネット活用、経営改善の取り組みも
民泊は「イコールフッティング」の原則で

-販売促進におけるインターネットの活用について、お考えをお聞かせください

針谷 会員が活用できる仕組みづくりを考えていきたい。一部の例外を除いた会員のほとんどがウェブサイトを持っている。我々は会員に対し、宿泊施設の販売支援システムとして「Open Web(オープン・ウェブ)」を提供しており、規模がかなり拡大してきた。

 オープン・ウェブは自社ウェブサイトでの予約を増やすためのもので、旅館が自社の予約エンジンに登録している宿泊プランや客室の在庫を、協会のサーバー経由で旅行会社や宿泊予約サイトに提供している。

 OTAの利用はそれぞれの旅館やホテルの戦略次第だと思うが、OTA経由の比率が高まると、手数料率が高くなるので、我々としては警戒している。例えばある旅館の売り上げのうち7割以上を特定のOTAが占める場合、そのOTAの利用を中止すると死活問題になってしまう。こうした一部のOTAによる寡占は市場の健全な発展を阻害するため好ましくない。そのための対策の1つがオープン・ウェブだ。


-従来の旅行会社との関係についてはどうお考えですか

針谷 直販やOTAでの販売のみの旅館、リアル店舗のある従来型の旅行会社との取引が中心の旅館など、方向性は各社の選択の問題なので協会として示すことはない。OTAの事業は従来型の旅行会社がおこなっている「販売代理業」とは異なる「購買代理業」で、品揃えの豊富さ、見やすさ、予約のしやすさを顧客に提供している。一方で従来型の旅行会社は、旅行を作る、需要を喚起することに非常に優れている。従来型の旅行会社はその長所を活かしていくことで、旅館からの理解を得られると思う。


-昨年は官民協働で宿泊施設の生産性向上に向けた取り組みがはじまりました

針谷 旅館やホテルの生産性を高めることは業界にとって喫緊の課題だ。昨年は「旅館ホテル生産性向上協議会」を立ち上げ、生産性向上のモデルとなる8軒の旅館を選定した。今回の取り組みをチャンスとして捉え、生産性の向上をはかりたい。

 旅館は生産性の向上について、それほど関心が高くないのが現状だ。たとえば、食器洗い機を導入している旅館のうち、食器を洗ってから機械に入れる予備洗浄をしている施設が全体の8割を占める。洗浄機では落ちない、ご飯の入ったお櫃などの容器や茶碗蒸し以外は予備洗浄無しで対応できるので、余計な作業だ。

 今年は官民協働で、全国の11ヶ所で生産性向上のためのワークショップを実施する。こうした取り組みで生産性を上げていけば、他社の動きを見て「うかうかしてられない」と焦りを覚えるような雰囲気が生まれてくるのではないか。