既成概念にとらわれない発想で幅広く信頼関係を築く―株式会社全旅 代表取締役社長 中間幹夫氏

昭和のビジネスモデルからの脱却、旅行会社も社会貢献、地域貢献の意識を

-中間社長ご自身はどのようなお仕事に携わってこられたのでしょうか。

中間 鹿児島でアローツーリストという旅行会社を経営しており、鹿児島県旅行業協同組合の理事長も務めています。組合では昨年実施予定だった全国障害者スポーツ大会を日本旅行と組んで共同で受注しました。また新型コロナウィルス対策として自治体が行うワクチン接種事業と大規模接種事業運営を大手旅行会社と組んで受託するなど、行政関連事業へチャレンジしています。観光庁の「地域の観光資源の磨き上げを通じた域内連携促進に向けた実証事業」にも協同組合として参画し、4倍の狭き門を突破して認証を得ました。組合の強みを発揮できた事例として自慢できるものです。

 アローツーリストとしては官公庁の仕事や福祉関連の旅行事業に力を入れています。福祉施設が農業法人を営むケースも多く、農業関連の旅行事業を取り扱うこともあります。今後は旅行業界としても個々の旅行会社としても、より社会貢献や地域貢献に対する信念を強く持たなければ生き残れません。

-その姿勢がなければ観光地にも受入れられないでしょうね。

中間 その通りです。旅行業界はこれまで観光地や関連事業者から収益を得てきましたが、このビジネスモデルはもう限界。だからこそコロナ禍でここまでどん底に落ちた。社会貢献、地域貢献を通じて色々な人につながっていれば、ここまでにはならなかったでしょう。そこは我々に決定的に欠けていた点です。社会貢献や地域貢献の重要性について、啓蒙活動も含めて全旅としても旅行会社としても取り組んで行くつもりです。

-全旅の旅行事業は今後どのような形になっていくのでしょうか。

中間 旅行事業は西日本支社に移管して、良い意味での再構築を図ります。従来のような昭和時代の旅行事業モデルから脱し、旅行コンサルやシステム対応による販売拡大を目指します。また官公庁や自治体から発生する需要を取り込むにはシステム対応が不可欠なので、自社でのシステム開発が難しい会員のためにも、システム面でリースやレンタルの形で手を差し伸べられるようにしていきます。

-事業へのコロナの影響を教えてください。

中間 主力のクーポン事業はコロナ前に396億円を売り上げ、500億円を目指そうというタイミングでした。2020年度の売上は2019年度の38.6%に留まり約6割減。赤字が膨らみ積み上げてきた自己資本の約3分の1が失われ非常に残念です。コロナ前の自己資本比率は58%。絶対安全圏とされる70%を目指そうという矢先の赤字で経営者としての夢が遠のきました。

-顧客である旅行会社側の事務精算費やベンダー側の手数料率などへの影響はありますか。

中間 コロナの影響を受けての変化はありませんが、常々考えてきたことの実行を急がねばと思います。会員をサポートすると言いながら、アレも駄目コレも駄目という決まりが多く我々が壁を作っていた面があります。2015年にクーポン保証料の0.5%は撤廃しました。ご利用いただいている会員様からさらに保証料を求めるのはおかしな話ですから。

 社長のほかに保証人を1人付ける保証人制度も、銀行でさえ社長1人の保証を認める時代にそぐわないと思います。保証人がいても焦げ付きを確実に回収できるわけでもなく、ならば会員様のご利用の壁になるような規定を改めようと考えています。

 ベンダー側への手数料は1%で、年会費が5,000円のみです。

-デフォルトへの対策は再保険ということですか。

中間 そういうことです。保険で75%をカバーできます。しかし、そもそも当社における事故率は0.0025%程度。3,000社のクーポン会員がいながら事故率はゼロに等しい。それくらい会員はまじめにビジネスに取り組んでいます。中小零細企業に対する先入観があるかもしれませんが、この事故率の低さです。

 ペイメント事業についてはJCBカードで決済できるようになりました。利用料は2.48%です。(株)全旅が儲けようとは考えていませんから、カード会社への手数料がほぼそのまま会員手数料になっていますが、それでもやや高い。今後は実績を重ねてカード会社と交渉し、手数料率1%台を目指します。