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東京都、「アクセシブル・ツーリズム・シンポジウム」を初開催

  • 2017年11月29日

「積極的な声がけ」で心のバリアフリーを
障害者差別解消法の普及に期待

まずは「積極的なコミュニケーション」から

田中氏  コーディネーターを務めた、ANAセールスCS推進室ツアーアシスト課課長で日本旅行業協会障害者差別解消法特別委員会副委員長の田中穂積氏は、「日本ではアクセシブル・ツーリズムの認知が進んでいない。旅行会社は、『ノウハウがない』『知識がない』と及び腰」と問題を提起し、推進に向けてのハードルをパネリストに問いかけた。

 それに対して岸田氏は、「日本人は障がい者に対して過剰に接しているか、あるいは無関心」「障がい者と接する機会が少ないため、接し方が分からない」「100%の知識や技術を身につけてから行動を起こしがち」の3つをハードルとして指摘した。

 中村氏は、京王プラザホテルの宿泊者の7割から8割が外国人であることから、肢体不自由の障がい者だけでなく、「異文化への対応もユニバーサルデザイン。まずは相手を理解することが大切」と述べ、従業員教育の重要性を強調した。また、「とにかく声がけが大事」と主張し、「当たり前の対応としてもっと緊密なお客様とのコミュニケーションが求められる」と述べた。

 淵山氏は、「専門的な募集型企画旅行を増やしていくのではなく、FITで旅行しやすい環境を整えていくことが大切」と主張し、旅行会社は現在、障害者差別解消法への理解を深めている途中段階にあるとの認識を示した。また、障がい者への対応については、過去の障がい者ツアーでの添乗経験を引き合いに出し、「習うより慣れろ」が重要と指摘。「習うだけでは次のステップに進まない」とし、行動を起こすことの必要性を訴えた。

親川氏  親川氏は、障がい者も一様ではないことから、「普段どうしているかを尋ねること」を第一歩として、「障がい者だけでなく海外からの旅行者に対して、それぞれの困難を理解して備えることが大切」と語った。あわせて、バリアフリーネットワーク会議として、沖縄で10年前からセミナーなどを開催し、啓発活動を続けていることも紹介した。

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けてハードのバリアフリー化が進んでいるなか、観光庁は観光における「心のバリアフリー」を提言している。田中氏は「それがアクセシブル・ツーリズムのキーワードの1つ」と位置づけ、パネリストの議論を踏まえた上で、「障がい者理解の前提は積極的なコミュニケーションだろう」と総括した。


取材:山田友樹