東京都、「アクセシブル・ツーリズム・シンポジウム」を初開催
「積極的な声がけ」で心のバリアフリーを
障害者差別解消法の普及に期待
東京都はこのほど、「高齢者や障がい者、誰もが快適に観光できる東京をつくろう」をテーマに「アクセシブル・ツーリズム推進シンポジウム」を初めて開催した。ユニバーサルデザイン関連企業のミライロの講師で、日本ユニバーサルマナー協会理事の岸田ひろ実氏による基調講演のほか、旅行会社、ホテル、NPO法人によるパネルディスカッションを実施し、バリアフリー観光の課題と可能性について議論をおこなった。開催に先立ち、東京都産業労働局長の藤田裕司氏は「2020年に向けて、高齢者、障がい者が積極的に旅に出ていけるような環境づくりを進めていく」と挨拶。観光のバリアフリー化に向けて旅行業界をサポートする考えを示した。
ミライロ講師、日本ユニバーサルマナー協会理事 岸田ひろ実氏
・パネリスト:
京王プラザホテル宿泊部客室支配人 中村さおり氏
KNT-CTホールディングス地域事業部課長、クラブツーリズム・ユニバーサルデザイン旅行センター課長 淵山知弘氏
琉球大学観光産業科学部観光学科非常勤講師、NPO法人バリアフリーネットワーク会議代表 親川修氏
・コーディネーター:
ANAセールスCS推進室ツアーアシスト課課長、日本旅行業協会障害者差別解消法特別委員会副委員長 田中穂積氏
岸田氏「20年に向けてユニバーサルマナーの普及を」
「アクセシブル・ツーリズム、2020年に向けて〜ユニバーサルマナーから考えるおもてなし〜」をテーマに基調講演をおこなった岸田氏は、知的障がいのある長男の出産、夫の突然死を経験した後、08年に自身も大動脈解離の後遺症で下半身麻痺となり車椅子生活に。現在は高齢者や障がい者などに向き合うための「ユニバーサルマナー」の指導に従事している。
岸田氏はまず、日本では現在、高齢者3460万人、障がい者860万人、3歳未満の315万人がユニバーサルデザインを必要としており、その割合は人口の3分の1に上ると説明。環境や設備などハード面の整備にはスペース、時間、予算もかかりハードルが高いが、配慮、態勢づくりなどソフト面の充実はすぐにでも可能とし、「心のバリアフリーが求められている」と主張した。
その上で「自分とは違う誰かのことを思いやり、適切な理解のもとで行動する」ユニバーサルマナーへの取り組みを提唱。「特別な知識や高度な技術は必要ない。『声かけ』が大切」と強調し、「お手伝いできることはありますか?」を「魔法の言葉」として紹介した。
また、自身のハワイ、ミャンマー、沖縄への旅行を例に、「旅は夢であり、希望。障がいがあっても楽しめる旅はあることを伝えていきたい」と述べるとともに、昨年成立した障害者差別解消法の理解と普及に期待感を示した。