日本のクルーズ振興、官民共同でルート形成を-運輸総合研究所
バラエティに富んだ客船で多様なコースを
旅行会社にチャーター促進呼びかけ
日本で若者向けのクルーズを
寄港増に向け、日本人利用者増へ
セミナーでは、客船評論家で1985年から毎年刊行されているガイドブック「Cruising and Cruise Ships」の著者であるダグラス・ワード氏が登壇。世界のクルーズ市場について、カリブ海クルーズの新たなクルーズ利用者の4割は40歳以下であることを例に挙げ、利用者の平均年齢が若くなりつつあることを説明した。
その上で、同氏は「若い人向きの客船が日本にない」と指摘。日本のクルーズ船社によるクルーズは「高級で値段も高く、リピーター向け」であることを語り、「資本力のある会社が長期的視点を持ち、若者向けの客船を造らなければ、日本のクルーズ市場の成長はゆっくりなまま」と語った。
また、クルーズの寄港を誘致する地方自治体や港湾関係者に対しては、「とにかく港に船が来てくれさえすれば良いと誤解しているのでは」と述べ、港に適切なサイズの客船を誘致する必要性を説いた。さらに、港湾施設の整備や港から観光地に迅速に移動するためのインフラの整備が必要である旨を強調した。
このほか、クルーズ船国際協会(CLIA)のアジア事務局長であるデイビッド・ゴー氏はアジア地域のクルーズのトレンドを解説。2016年は60隻の客船が計5500回寄港し、約1100万人の利用者を見込でいるという。
今後の見通しについては「客船が大型化し、寄港数も増える」とした上で、日本と中国、韓国、台湾で客船の誘致競争が激化しつつある旨を説明。訪日需要の取り込みも重要としながらも、「日本人のクルーズ市場が停滞すれば、クルーズ船社が日本に寄港しなくなる。日本寄港を維持するためには日本人の利用が必要」と語った。