日本のクルーズ振興、官民共同でルート形成を-運輸総合研究所
バラエティに富んだ客船で多様なコースを
旅行会社にチャーター促進呼びかけ
運輸政策の研究・提言をおこなう一般財団法人運輸総合研究所(JTRI)は、11月30日に「日本人によるクルーズ振興に関する国際セミナー」を開催し、日本のクルーズ振興に向けた調査報告書と提言を発表した。JTRIがクルーズに限定したセミナーを実施するのは今回が初めて。冒頭登壇した同研究所ワシントン国際問題研究所所長の鷲頭誠氏は、「セミナーでクルーズの現状や今後の方向性について理解を深めていただき、日本のクルーズ振興のきっかけになることを期待したい」と語った。今回は調査報告書と提言に関する鷲頭氏の講演を中心に、セミナーの内容を紹介する。
クルーズ先進国は幅広い客層が利用
日本のクルーズは「高級」イメージが障壁に
セミナーの冒頭、鷲頭氏は「世界のクルーズ利用者は年間で2000万人を超え、この10年間で約2倍に拡大した」と語り、クルーズ市場の成長性を強調した。さらに、クルーズ産業は直接的な経済効果で約5兆円、間接的な経済効果を含めると約12兆円の「非常に大きな産業」であることを説明した。ただし、日本市場は訪日クルーズ旅客数は増えているが、日本人のクルーズ利用者数は「15年ほどは横ばいで20万人程度」と停滞しているという。
JTRIはこうした現状を踏まえ、クルーズ利用者が多い「クルーズ先進国」の米国、ドイツ、オーストラリアと日本について、消費者やクルーズ関連事業者を対象にアンケートやヒアリング調査を実施。調査をもとに各国のクルーズ市場を比較し、日本市場の振興に向けた提言をまとめた。
調査によれば、クルーズ先進国の場合はクルーズのエリアやルートは自国の周辺が中心で、年齢層は若年層からシニア層まで幅広い。鷲頭氏によればドイツやオーストラリアでは主な利用者は若年層という。クルーズ代金は1泊2万円程度で、カジュアル船によるクルーズが主体。クルーズ日数は3日から1週間程度だった。
日本の場合は日本船社による3隻の中型客船が主で、外国船社による日本発着クルーズもあるが「未だに限定的」という。日本船社の客船は「いずれもラグジュアリーまたはプレミアムクラスの客船」で、利用者は時間的、金銭的に余裕があるシニア層がメイン。費用は1泊あたり4万円から6万円で、クルーズ日数は3日から6日だが、1泊の体験クルーズも多いという。
このほか、日本人へのアンケート調査では、日本人のクルーズは「高級」「ドレスコードがある」「船酔いする」といった先入観が強いことがわかり、鷲頭氏は「参加に対する心理的なバリアがある」と指摘した。