民泊、「簡易宿所」登録で対応へ、面積基準など緩和-4月目途に
観光庁と厚生労働省は1月25日、「『民泊サービス』のあり方に関する検討会」の第5回会合を開催した。会合では、現行制度の枠組みでの対応策として、旅館業法の「簡易宿所」の枠組みを活用し、民泊における旅館業法の許可取得の促進をはかる方針を改めて確認。その上で、政令で指定されている、簡易宿所の客室の延床面積の基準を緩和し、許可を取得しやすくすることを決めた。厚生労働省によれば今後は政令を改正し、4月1日を目途に施行したい考えだ。
検討会では第4回の会合で、検討すべき課題について、現行制度で対応可能と考えられる「早急に取り組むべき課題」と、法改正を含む、現行制度の枠組みを超えた検討が必要な「中長期的に検討すべき課題」に2分しており、今回の政令改正は早急に取り組むべき課題の解決に向けたもの。現在、簡易宿所の客室の合計延床面積は、政令により33平方メートル以上と規定されているが、これに対して会合では、33平方メートル未満の物件の活用をはかるため、事務局側が戸建住宅や共同住宅といった対象物件の類型を問わず、定員1名あたりの面積を設けて収容定員に応じた面積基準にすることを提案。委員に了承された。今後は事務局内で1名あたりの面積を設定し、内閣法制局との協議の上、2月中にパブリックコメントを実施する予定だ。改正後は都道府県側に対して制度変更を周知し、民泊提供者などへの呼びかけについて協力を求めていく。
会合ではそのほか、早急に取り組むべき課題の1つとして、簡易宿所における玄関帳場(フロント)の設置を定めた通知について、事務局から運用の見直しが提案され、委員の合意を得た。現在は厚生労働省の「旅館業における衛生等管理要領」の通知において、簡易宿所営業の施設設備の基準として「適当な規模の玄関、玄関帳場またはフロント及びこれに類する設備を設けること」と定めているが、今後は弾力的な運用ができるよう表現を和らげ、4月1日を目途に改正する。
また、中長期的に検討すべき課題については、家主が居住して自宅の一部を貸し出すような「ホームステイタイプ」の民泊について、旅館業法の許可の枠組みを適用する必要性・妥当性に関する検討が必要である旨を事務局が提案。具体的な検討内容として、客室の貸出日数、宿泊者数、面積や、宿泊者名簿の設置など宿泊サービス提供者が管理すべき内容などを挙げた。また、旅館業法内の新たな類型として民泊を位置づけるか、業法以外の新しい法体系で規制するかについても話し合う必要性があると問題提起した。これに対して委員からは「ホームステイタイプ以外の民泊についても論点として位置づけるべきでは」との意見が挙がり、次回以降の検討課題となった。
事務局はさらに、建築基準法の「用途地域」の規制のため、ホテルや旅館は住居専用地域では営業できないことについて「日本の暮らしを体験できるという観点や、良好な住環境を保持する観点などを踏まえて検討すべき」とも提案した。このほか会合では、現行の民泊仲介業者が利用者を評価し、その評価の内容に基づき宿泊を拒否できるシステムを採用している現状を踏まえ、同システムを活かしたルール化を求める声が挙がった。また「仲介業者の責任をいかに規定するか」「旅館業法の罰則を時代に合わせた形に変更するべきでは」との意見も寄せられた。次回の検討会は2月29日を予定する。