百戦錬磨が「ヤミ民泊撲滅」、JATAは「斡旋可能な制度を」-検討会

  • 2015年12月21日

会合の様子  観光庁と厚生労働省は12月21日、自宅の一部やマンションの空室などを活用した、いわゆる「民泊」サービスのルールづくりについて議論する「『民泊サービス』のあり方に関する検討会」の第3回会合を開催した。今回は民泊仲介事業を展開する「とまれる」の親会社の百戦錬磨と、日本旅行業協会(JATA)からヒアリングを実施。そのほか内閣官房のIT総合戦略室が、主に民泊サービスを念頭に置いたシェアリングエコノミーの制度整備に向けた検討状況を説明した。

 百戦錬磨の代表取締役社長の上山康博氏はヒアリングの冒頭で、同社が国家戦略特区における民泊や農家民泊などに限定した「合法の範囲で」少しずつ事業を拡大していることを強調。しかし現在の市場では脱法業者による「ヤミ民泊」が横行しているとし、今後は仲介業者への規制を強化してヤミ民泊を撲滅すること、実効性のある規制制度づくりをおこなうことを提案した。

 具体的な制度づくりに向けては「国家戦略特区とイベント民泊によって、規制内容を検証する必要がある」と主張。シェアリングエコノミーにおいては供給者の増加が著しいことから「プラットフォーム業者が自らを規制することが大切」と述べ、健全な民泊の普及のためには「掲載物件の遵法」「情報開示および行政との情報共有」「保険の設定」の3つが仲介業者の責務として必要との見方を示した。

 JATA理事長の中村達朗氏は、近年の訪日外国人旅行者の急増による、全国の客室の需給状況の変化などについて説明。東京や大阪などに需要が集中していることから「旅行会社が客室を取りにくい状況」と伝えたが、一方では「通年の問題ではない」との見方も示し、依然として収容力のある旅館の利用促進や、需要の地方分散化への取り組みの必要性を強調した。

 また、旅行業界からの視点として「単に宿泊施設不足を補完するものとしてではなく、商品の多様化をはかる観点から検討を進めることが適当」とも語り、旅行商品としての取り扱いにも関心を表明。「旅行業法に基づいて斡旋できる制度の構築」と「取り扱う業者間でのイコールフッティングの確保」の2つを要望するとともに、「地方における古民家や町家の活用も視野に入れた検討を望む」と求めた。

 内閣官房のIT総合戦略室は「情報通信技術(IT)の利活用に関する制度整備検討会」で取りまとめ、現在はパブリックコメントを募集中の中間整理案について報告。そのなかにおいても諸課題に対するルール整備のあり方として、シェアリングエコノミーサービスを提供する事業者が損害賠償をおこなう場合に備えて取るべき措置、法令違反などを認知した場合の監督官庁への届出の仕組みなどについて留意すべきとされている旨を説明した。

 意見交換では、現在の議論においては「一般住宅か共同住宅か」「家主の居住・非居住」などをもとに分類している物件の類型の見直しを求める意見などが挙がり、議長を務める東京大学大学院工学系研究科教授の浅見泰司氏は、次回の会合からは省令改正などにより早急な対応が可能な課題と、法改正などを伴い検討にも時間を要する課題とに分けた上で議論をおこなう考えを示した。2016年1月12日の次回会合では、観光庁と厚生労働省が諸課題を分類した、検討の叩き台となる資料を提出する見通し。