新春トップインタビュー:JATA会長 田川博己氏

2015年は「節目の年」、7月以降に勝負
海外・国内・訪日それぞれ対外発信強化

-2015年、海外旅行関連ではどのように事業を推進されますか

田川 日韓、日中の状況改善をできるだけ早めに仕掛けていきたい。少なくとも6月の総会までに具体的に何かやれることをしっかりやり、1年掛けて改善の道筋をつくりたい。

 2014年は、旅行産業だけでなく政治家も、両国との関係を何とかしなければいけないと強く思われた年だと思う。2015年はその思いを具体化していただけるという前提で、我々民間としても取り組む。

 山の頂は政治の世界であって我々の努力で乗り越えられるものでなかったとしても、裾野であれば行けるだろう。とりあえず山の8合目辺りまで行っておき、10合目の話が終われば一気に登れるようにしておくようなイメージだ。10合が15合になってしまうと困るが、今の様子であればそうはならないのではないかと期待している。

 また、菊間副会長が中心になって、出国者数2000万人の達成に向けた政策提言を取りまとめている。これまでは需要喚起に注力してきたが、海外旅行に行く意味を訴えたい。インバウンドで海外の消費者へ日本に来る意味を説いているように、海外旅行をする意味を考える必要がある。これをできるのはJATAだけだという自負もある。


-国内旅行、そしてインバウンドについてはいかがでしょう

田川 まずインバウンドでは、ツアーオペレーター品質認証制度を世界に向けて発信する。訪日外客数がこれだけ増える中で必要なのは、同時に質的な向上をはかることだ。制度は稼働して2年目なので、積極的にアピールする年にしたい。将来的には、ニュージーランドの「クォールマーク」のように宿泊や小売店など他の業種業態でも活用されることが理想だ。

 ただし、この制度について一番アピールしなければならない組織はJNTOだ。外国人が日本に旅行して良かった、質的に良かったといって安心してお帰りになることが、政府観光局にとっての良い評価だ。

 国内旅行については、東北復興。東北の復興をなくして日本の再生なし、という言葉が段々色あせてきているが、JATAは東北を忘れない、それをもう一度しっかり打ち出したいと思っている。


-制度や規制などの改善に向けてはどのように動くお考えですか

田川 制度面で大きな課題となっているのは旅行業法関連だ。特に旅程保証についてはヨーロッパなどから問題視されているところで、日本の業者が不利になる原因を取り除き、世界のグローバル水準に合わせる。旅行業法をグローバル水準にしていくということは、会員の方々にも理解いただかなければいけないし、消費者の理解も得なければならない。

 また、OTAとの競争条件についても、エクスペディアなど外国の企業が日本の法律に従うのかどうかという問題は別の業種でも揉めているところで、答えを出しにくい。本当は経産省の仕事ではないか。世界のインターネット業界が国別の法律をどう捉えているか、そちらの結論を待たずに旅行業界についてのみ総括するのは難しいと思う。

 さらに、一番の課題である休暇制度では、どうやって休暇を増やすかを主眼に置く。制度よりも休暇を増やすことについて、JATAとしてもしっかり提言をしていく。休暇ということに対して国民がどう感じているか。休むことが罪悪という風に感じていないだろうか。これまでは業界内部で議論していたが、それを外に発信する。産業競争力会議などでも観光関係のテーマが圧倒的に増えてきており、発言する場所はある。


-燃油サーチャージについてはいかがでしょうか

田川 燃油サーチャージは、トラック業界など他の業界にもある中で、制度そのものを根本的に覆すことはなかなか難しいだろう。とすれば、その制度の運用について、消費者に不利になるような手法は厳に慎むべきだという風に訴えていく。

 例えば、航空運賃が格安なのに燃油サーチャージが6万円などというのはあまりにひどすぎる、という世間一般の常識の範疇のことを訴える。そして例えば燃油サーチャージは1万円を上限として、それを超えた分は運賃化してほしいと。それは航空会社側も考えているはずだ。