新春トップインタビュー:JATA会長 田川博己氏
2015年は「節目の年」、7月以降に勝負
海外・国内・訪日それぞれ対外発信強化
-今後の航空業界に対するご期待は
田川 持論はオープンスカイだ。98の空港が下手をするとほとんど倒産してしまうような状況の中で、それらの空港へ外国系の航空会社が自由に出入りできるようにするためにもオープンスカイが必須だ。
外国系といってもレガシーは難しく、やはりLCCだろう。彼らにローカルtoローカル、ローカルtoメインだとかのネットワークを自由に作らせる努力をしなければ、オリンピックよりも前に地方空港が疲弊してしまうのではないか。
LCCの利用率は日本の中でまだ8%程度。世界では30%を超えている中で、是非やらなければいけない。東シナ海にある日中韓台の4ヶ国・地域の中でLCC化率を高めていくことが次の施策だと思う。
-国内では、インバウンドの好調さもあって宿泊施設やバスを確保しにくくなっています
田川 民間がやらなければいけないことと国がやらなければいけないことが整理されていない。宿泊施設の不足については、例えば、ヨーロッパなどにあるユースホステルとホテルを合わせたような近代的なホステルは日本で一番少ない宿泊施設だが、町家やアパートメントホテルを旅行会社が売れるようにして欲しい。
そういう風に、流通を規制するものがたくさんある。特区で農家民泊をやっているが、同様の取り組みを進めていただきたい。東京でもオリンピックに向けてアパートメントホテルのような形態の施設が出てくるが、ホテルなのか賃貸なのかが中途半端だ。旅行会社が取り扱えるようになれば、もっと効率よく販売できる。
バスについては、規制緩和をしてみたら事故が起きた、それでまた規制しよう、という流れでマッチポンプのようだ。一番の問題は、営業エリアだと思う。北海道で夏場と冬場の需要が増えるのであれば、例えば東京の大手バス会社が500台持っていたとして、例えばそのうちの1割、50台を向こうに置いておくということができるようにするべきだ。
こうした課題について旅行業界の人間が学ぶことも必要だ。鉄道やバスなど乗り物、宿泊などの制度や法律を熟知していないと、旅行の規制緩和や需要創出には取り組めない。
-人材育成についてはどのようにお考えでしょうか
田川 育成は企業単位でやるべき仕事だが、人材の確保を応援するのはJATAの仕事。ツーリズムEXPOジャパンなどの場や、JATA役員を務める各社の経営幹部による学校への出前セミナーなどで、学生に業界を知ってもらいたい。修学旅行にしても、単に旗を持って生徒を連れて歩くだけの仕事ではない。教員と一緒にどういったプログラムを作るかというソリューションビジネスであるわけだが、そういう点についてあまり伝わっていない状況だ。
また、知識向上のためのプログラムとして、デスティネーション・スペシャリストを「エリア・スペシャリスト」に変更したところだが、この浸透に向けて会員各社が人事考課に組み込むように働きかける。
-業界全体のコンプライアンスについては
田川 コンプライアンスは企業が存続するための最低条件だ。オリンピックの決定など観光への注目が高まるにつれて、旅行会社のコンプライアンスに対する目もより厳しくなることを理解しなければならない。
その意味でJATA会員の中には、他業界の大手企業で修羅場をくぐった経験を持つ人材が傘下のインハウス旅行会社に経営幹部として就任しているケースもあり、そういった方々の知見も積極的に活用したい。
-ありがとうございました