新春トップインタビュー:JTB代表取締役社長 田川博己氏

「2012年、仕掛ければ動く」
中期計画は変更せず構造改革と成長戦略に注力

-2012年は日本でLCCの動きも活発になります

田川 日本の航空会社との合弁とはいえ、海外の航空会社がはじめて国内路線を飛ぶことになる。単に座席が増えるということだけでなく、それは革命的な出来事だろう。座席の増加、人流の増加が期待できる。欧米のように日本でもLCCが一般化すれば、海外旅行者も2000万人を超えるのではないか。

 ただ、JTBとしては単にLCCの座席を売るという考えはない。それよりもDMC(Destination Management Company)と連動させ、地域の旅行素材の開発や交流文化事業と組み合わせるなど、旅行会社としてしっかり取り組んでいきたい。


-航空座席の仕入れについてはどのようにお考えでしょうか

田川 2011年は訪日需要の減少で座席に余裕が出たためチャーターの数が少なくなったが、2012年は2011年比で3倍、2010年比では2倍程度に強化する。LCCをチャーター化することも可能ではないか。

 チャーターは本来ならオントップでやるべきものだと思うが、レガシーキャリアはその時期にチャーターを飛ばす余裕がない。代わりにLCCが飛ばすのは大いにありえるのではないか。そういうところもLCCが参入する価値だと思う。旅行会社にしてみれば、安い航空券が入ってきたというよりも、定期便であれチャーターであれ、座席が増えることを歓迎している。

 中長期的に見れば、インを増やしながら同時にアウトを増やしていく双方向の交流が重要だ。特に日中韓そして台湾との双方向交流の議論を深めていくことが大切だろう。双方向で考えなければ、航空座席は増えない。インバウンドはアウトバウンドを増やすためにも大切なこと。今までは、インはイン、アウトはアウトでやってきたが、アジアに関していうと、インとアウトはセットで考えるべきだ。


-旅行業界全体の課題として人材育成が挙げられていますが、JTBグループの取り組みについてお聞かせください

田川 私が社長になったときからの大きな目標のひとつが“人財”育成だ。人財の財には、個人の持っている能力を引き出すこと、会社がその人に投資しているという二つの意味がある。

 JTBでは分社化を進めた時に、“JTBユニバーシティ”という大きな枠を作り、5年かけて新しい体制を築いてきた。今年からこれが本格的に動き出す。縦軸に世代別の研修カリキュラムがあり、横軸にロイヤルスタッフ制度や地域交流のプロデューサー教育などのカリキュラムを備える。

 もうひとつはグローバル人材をどう育てるかが大きなテーマ。今年からはグローバル人材を本社組織の一員として動かしていく。例えば、留学生を採用した後、日本で教育して現地に戻す。あとは実践あるのみだと思う。


-今年3月に創立100周年を迎えられます

田川 JTBの始まりは、日本を世界に知ってもらうために、外国人を日本に呼ぼうという外客誘致。その100年前の事実を知ることが大切だと思う。事業としてただ100周年を迎えるのではなく、創成期のことを知ったうえで、社員にはこれからやるべきことをやってほしいと思っている。日本は大震災で大きな被害を受けたが、ツーリズムの立場から今の日本の強さを伝えていく姿勢を大切にしていきたい。


-ありがとうございました