文科省、原発賠償金仮払いを10%減額に見直し-9月以降は減額せず
文部科学省は10月21日、福島原発事故に伴う観光業の風評被害について、国による原子力損害賠償金の仮払い制度を見直した。これにより、8月31日までの減額の割合を20%から10%へと引き下げ、9月以降は減額しないこととした。
国による仮払い制度は、東京電力による本賠償が遅れる場合に東京電力が支払うべき賠償金の一部を国が先に支払う制度で、東京電力の賠償金の暫定値から減額分を差し引いた半分を仮払いするもの。対象地域は福島、茨城、栃木、群馬県の4県で、同省によると、10月24日時点で約25件の申請があるという。
これまでは阪神淡路大震災のデータを参照し、観光業の減収要因には原子力事故以外の地震や津波などの影響もあるとして、減額分20%を差し引いていた。しかし、観光庁による2011年8月までの主要旅行会社58社の旅行取扱状況速報によると、震災後の取扱額が前年比約14%減となっていたことから、今回の見直しを実施した。
一方、東京電力は、観光業の風評被害での売上減収率について、旅行会社をはじめ各方面からの見直しの要請を受け、減収率の減額も視野に入れた上での見直しを開始している。同社によると、今回の文科省の引き下げも踏まえた上で現在詳細を検討中だという。
同社によると、10月21日現在、法人および個人事業主に対する請求書用紙などの送付は1万件以上にのぼり、約1600件の請求書を受け取っている。また、本賠償では2団体1事業者、計181億円について合意したという。今後は対応要員を増やす計画で、10月1日から補償相談センターの要員を1300名増の1700名に増やしたほか、補償相談室全体についても、10月末をめどに6300名増の7300名に増やす予定だ。