海外回復に向け旅行会社トップが議論-JATA経営フォーラム
業界を挙げて市場開拓や情報発信を
新たなトレンドづくりも
JTBWV井上氏「2000万人時代必ず来る」
企画力向上で「創る旅の時代」へ
1月にJATAなどが組織した視察団の一員として同時多発テロ事件後のパリを訪れたJTBワールドバケーションズ(JTBWV)代表取締役社長の井上聡氏は、年間出国者数2000万人時代については「必ず来る」と明言。JTB総合研究所の調査をもとに、1989年以降は海外旅行を2回以上経験している人の割合が確実に増えていること、54年から84年までに生まれた新人類世代や団塊ジュニア世代のFIT化が進んでいることなどを理由として挙げるとともに、アジア諸国の経済発展やTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)協定の発効による人的交流の増加にも期待を示した。
井上氏は年間出国者数2000万人時代は「行って何かをする意味を問う時代」になると予想。航空券や宿泊施設などを組み合わせただけの「素材提供型商品」の供給が中心だった「行ければよかった時代」から脱却し、旅行先ならでは体験を旅行会社が発掘して需要喚起を進める「創る旅の時代」をめざすべきと主張した。また、そのためには旅行会社の企画力が問われることを強調。「旅行会社における企画力は、製造業における技術力」と述べ、各社の奮起を促した。
流通については「商品=パンフレットという紙文化からの脱却が必要」と述べ、「商品情報や販売情報はすべてデジタル情報からスタートする」との方針を説明。紙のパンフレットの制作に投入する資源を縮小していく姿勢を示すとともに、店舗販売とウェブ販売の連携や棲み分けについて引き続き検討する考えを示した。販売のタイミングについては16年度上期から旅行代金変動型商品を導入したことを説明し、「流通慣習の変革に挑戦する」と主張。宿泊施設の買い取りなどに積極的に取り組み、間際での販売から先行型の販売にシフトする考えを示した。
そのほかには、学生などの若年層や子供連れのファミリーなど「将来の顧客」に引き続き注力するとした。JATAや日本海外ツアーオペレーター協会(OTOA)などが要望している、若年層のパスポート取得料を無料化する施策案については「最も手っ取り早い」と強調した。
旅行業界全体でトレンド作りを
お手本はアパレル業界
パネルディスカッションのモデレーターを務めたミキ・ツーリスト代表取締役社長の檀原徹典氏は、日本人の出国率が韓国などの周辺国と比べても格段に低い14%にとどまっていることを問題視。「残りの大多数をどうしていくかを議論しなくては」と述べた。また、ランドオペレーターとしての立場から、旅行業法における取消料の問題などについても言及し「我々日本側の仕入方法が特異すぎる。海外のホテルなどでは日本離れが進んでいる」と説明。仕入れについては井上氏も「航空座席や客室の数が逼迫するなかで、将来のためにもサプライヤーとバイヤーの関係をしっかり考える必要がある」と述べた。
これらの意見交換を踏まえて檀原氏は、「JATA副会長の菊間潤吾氏は以前、『アパレル業界はトレンドを自分たちの手で作り出して消費を喚起している』と仰っていた」と述べ、旅行業界でも自主的にトレンドを作って需要を喚起していくことを提案。「各社で競争はするが、旅行会社が一体となって1つのトレンドを作っていくことができれば」と述べ、海外旅行の回復に意欲を示した。