海外回復に向け旅行会社トップが議論-JATA経営フォーラム
業界を挙げて市場開拓や情報発信を
新たなトレンドづくりも
クラツー小山氏「競合相手は国内旅行」
ウェブ販売へのシフトなども課題に
クラブツーリズム代表取締役社長を務める小山佳延氏は、JATAがめざす2020年の年間出国者数2000万人の達成については、「今の業界の施策では無理」と懐疑的な見方を明示。同社が強みとするシニア層についても、10年後には海外旅行に意欲的な65歳から74歳までの前期高齢者が減少へと転じていることなどから、「考え方を大きく変えてなければいけない」と指摘した。
小山氏は、観光資源に富む国内旅行が海外旅行にとって大きな競合相手になっていることを説明。国内旅行のみに参加している利用者を、海外旅行に参加してもらうための説明会などについて、今後も継続していく考えを示すとともに、国内旅行から海外旅行への需要のシフトについては「マーケット全体で取り組む必要がある」と呼びかけた。また、今後は従来の大衆受けする価格訴求型商品ではなく、企画力に支えられた高付加価値商品が海外旅行の回復のカギを握るとの見方を示し、業界全体で盛り上げていくことを要望した。
今後の販売戦略については「紙媒体の取り扱いが最大の課題」と説明。「旅行に限らず、通販業界全体が紙からウェブへの移行で苦労しているが、全面的な移行に成功した例はない」と述べるとともに、「紙媒体はなくならないが、その価値は変わってくる。しかしウェブですべてを完結できるわけではないところが難しい」とも語り、今後も模索を続ける必要があるとの考えを示した。
楽天山本氏「スマホが満足度に影響」
「出張プラス1」の提案も
楽天執行役員トラベル事業長の山本考伸氏は、同社が現在の海外旅行市場に果たしている役割について「デスティネーションの開拓などについては早く他社に追いつきたいが、旅行に行きたい人の背中をひと押しする意味では、需要を喚起している」と説明。小山氏が語った国内旅行からの需要のシフトについては「まだ大きな動きにはできていない」と述べたものの、訪日外国人旅行者の増加によるLCC就航増などにチャンスが隠れているとの見方を示し、「国内旅行よりも安く隣国に行けたりすることが意外と知られていない。そのことをしっかり伝えられれば、新たな需要を掘り起こせるのでは」と提案した。
山本氏は、現代の旅行におけるインターネットやモバイル機器の重要性を強調。「スマートフォンのある旅行とない旅行では満足度は違う」と述べ、海外旅行では料金などの問題から、国内旅行と同様にはスマートフォンなどのモバイル機器を活用しにくい不自由さが、満足度を低下させている可能性があるとの見方を示した。山本氏によれば同社は現在、ツアー商品の利用者にWiFiルーターを無料または低価格で提供し、ルーターの利用者とそれ以外の旅行者の行動を比較して、リピーター化への影響を計ることを検討しているという。
そのほかには、海外旅行の回復に向けて、業務渡航とレジャーでの旅行を切り分ける考えをやめるべきと主張し、「出張プラス1(ワン)という感覚を当たり前にしていきたい」と提案。欧米から訪日するビジネスマンが業務後の延泊などを積極的におこなっている旨を説明した上で、「旅行業界の人間こそ出張先でも遊び、ソーシャルメディアなどで旅の魅力を伝えていかなくては」と述べ、業界全体でムード作りをおこなうことを希望した。