今後のホテルが問われるのは「人材確保能力」-リクラボ 久保亮吾氏寄稿

  • 2022年3月9日

 ホテル業界専門の人材会社リクラボの久保亮吾です。宿泊産業の人材市場をとりまくトピックについて書いていきたいと思っています。

 さて、「ホテル業界の人材をとりまく環境」を業界側の視点で見た場合、2022年は相当に厳しいことになるのではないかと私は予測しています。

フルマンニングで開業していない五輪前開業組ホテルが人を集め出す

 コロナ、コロナと言いながら、2019~2021年にかけてホテルは数多く開業しました。そりゃそうです。オリンピックに向けて、数多くのホテルプロジェクトが2014年以降に動き出しましたから。

 こうしたホテルたちですが、人を規定人数まで集めきれずに開業したところが多々あります。客観的に見ていると明らかに採用に失敗したホテルもあったのですが、そのままコロナ禍に突入してしまったので、「どうせ稼働も低いから、スタッフも少なくてよかった」という結果オーライ的な時期が、この2年間でした。

 そういうホテルにもコロナ第5波と6波の間の落ち着いた期間には一気に客足が戻り、かなりアップアップの状態になっていました。とくに高級価格帯の料飲部門において人手が足りず苦労していた感があります。

 「春以降にコロナが終息すると想定するなら、今の人員ではマズいな!」という焦りの感覚が出ている人事部も多く、新たな人材の採用に積極的になってきています。

契約社員や配膳会を切ってしまっている

 コロナ禍に突入して、契約社員や配膳会を切ってしまったホテルが多いのですが、早めに「すみませんでした!」と謝って取り戻しにかからないと、今度は逆に「もう送る人がいませんよ」と言われてしまうかもしれません。

 契約と配膳でやっていた分を正社員で補おうとすると大変です。セールスやバック部門の人員を投入してなんとか年末年始を乗り切ったところも多いですが、長くは持ちません。それを続けると今度は正社員側が疲弊してやめていきます。

 また、パート・アルバイトなど非正規雇用の人材に関しては他業界との奪い合いも激しさを増します。料飲部門に関しては外食産業の時給がどんどん上がっていますので、そちらに流れていってしまう人も多いでしょう。

三大都市圏(首都圏・東海・関西)職種別 平均時給推移。宿泊関連の仕事は「販売・サービス系」に分類される。(出典:リクルート