ゆくゆくはイエローストーンを超える国立公園に―阿蘇火山博物館 岡田誠治常務理事
ガイドマッチングなどDXを積極的に推進
夜と冬の集客に向けてさまざまな仕掛け
岡田 コロナの影響はかなり大きいですが、現状は体質改善の時期だとの認識から、ローカルDXを進めています。2019年にはNECソリューションイノベータとの協業で、ツアー管理とガイド手配をクラウド上で一括管理する「NECツアーガイドマッチング支援」を導入し、オンラインによる効率的なガイド手配の仕組みを整備しました。また、昨年には、ツアー予約販売ECプラットフォーム「NECガイド予約支援」も導入しました。
コンテンツとしては、夜の阿蘇を楽しんでもらう目的で、昨年9月から10月にかけて「ネイキッド×阿蘇火山博物館 阿蘇ナイトミュージアム」を実施しました。星空鑑賞や映像・光・音で描くデジタルアートの世界を楽しんでもらう取り組みです。13日間で7000人の来場者があり、想定を上回る結果となりました。
この販売でもオンライン予約システムを活用し、カード決済にすることでキャッシュレス化を進めました。これにより、時間と人数を管理することができたため、館内やフィールド上で密になる状況を避けることができました。システムがうまく働いたと思っています。
当館の強みを生かしたオンラインコンテンツの配信を近々開始して、経営の安定化を図る予定です。更に、ワーケーションの受け入れ準備も進めています。また、次世代ガイドとしてサポーターガイド(SG)34名の育成も行っています。
このほか、熊本県とNECとの連携によって、顔認証による手ぶら観光の実証も行っています。将来のインバウンド復活を見据えて、さまざまなデジタルの仕組みの実装を検討しているところです。
岡田 公益財団として、火山を含めた阿蘇の自然科学分野での幅広い啓蒙啓発が一番大きいと思っています。日本火山学会や日本地質学会をはじめさまざまな機関から、その啓蒙活動に対して表彰をいただいています。東南アジアからも火山研究のために多くの方々が訪れています。その基礎のうえに、内外の観光客の方々に来ていただいていると思っています。
岡田 今年度実施したなかでは、教育旅行向けに実施した阿蘇の自然と環境をテーマにしたSDGsプログラムの反応が一番良かったです。これは、震災後に造成した防災学習プログラムをSDGs版に作り替えたものですが、来訪者のニーズと我々の思いがマッチしたいい商品になっていると思います。
コロナ後も、カーボンニュートラルの取り組みも含めて、SDGs関連のツアーは深堀していきたいと考えており、準備しているところです。将来的には訪日外国人にも参加してもらいたい。阿蘇くじゅう国立公園は、環境省の「国立公園満喫プロジェクト」の重点地区になっており、欧米豪がターゲットとなっていることから、当館としてもグローバル戦略を進めていく必要があるでしょう。弾丸旅行ではなく、自然を楽しむゆったり型のツーリズムを訴求していきたいと思っています。
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