ゆくゆくはイエローストーンを超える国立公園に―阿蘇火山博物館 岡田誠治常務理事

  • 2022年2月8日

ガイドマッチングなどDXを積極的に推進
夜と冬の集客に向けてさまざまな仕掛け

 日本を代表する国立公園の「阿蘇くじゅう国立公園」。その阿蘇にある「阿蘇火山博物館」は、数十万年に及ぶ火山活動の歴史や成り立ちを伝える博物館としてだけでなく、1階には「阿蘇山上ビジターセンター」を備えるなど、阿蘇観光の玄関口にもなっている。熊本地震や散発的な噴火、そしてコロナ禍と災難が続くなかでも、ガイドマッチングシステムなどDXを推進するなど、将来を見据えた取り組みを進めている。現状と今後の展望について、同館の岡田誠治常務理事に話を聞いた。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)

岡田氏。インタビューはオンラインで実施した。

-阿蘇火山博物館のご紹介をお願いいたします。

岡田誠治氏(以下敬称略) 1982年に九州産交によって設立され、今年で40年になります。2004年には地元の阿蘇製薬のオーナーが個人出資して、財団法人阿蘇火山博物館を創設。理事長は阿蘇製薬の社長が兼務しています。その後、2011年に公益財団法人阿蘇火山博物館久木文化財団に移行し、現在に至っています。

-岡田常務理事ご自身のご紹介もお願いいたします。

岡田 私は肥後銀行に37年間勤務していました。銀行ではさまざまな部署を経験し、7支店で支店長も務め、最後は公金を扱う公務部長を務めました。その後、肥銀カードの役員に転籍。肥銀JCBカードと肥銀ワールドカードとの合併の仕事に携わり、2010年に現職に就きました。

-阿蘇はこれまでさまざまな自然災害に見舞われてきました。

岡田 2016年の熊本地震では、阿蘇火山博物館も甚大な被害を受け、現状復帰だけで3億3000万円もかかりました。しっかりと復興計画を立て、順調に進捗していたところに、今度はコロナに襲われました。

 昨年10月20日には、中岳が5年ぶりに噴火。噴火警戒レベル3が発出され、火口周辺2kmは立ち入り規制されましたが、11月からレベル2に引き下げられています。レベル1になれば火口の見学も可能になります。

-コロナ禍の影響はいかがですか。

岡田 当館の有料入館者数は2015年度には約21万人、そのうち約7割の15万人が団体を中心としたインバウンドでした。熊本地震の発生後の2017年度は1万8000人にまで落ち込みましたが、2018年度は3万8000人、2019年度は5万5000人と順調に回復してきたところにコロナに襲われ、インバウンドがゼロになったことで、2020年度は2万8000人にまで減ってしまいました。

 国内旅行では、昨年以降SDGs関連の教育旅行が増えたこともあり、オミクロン株による感染拡大前までは、2021年度は5万人程度を見込んでいました。しかし、昨年末からオミクロン株の感染者が熊本県でも拡大。まん延防止等重点措置が適用されたこともあり、1月26日から2月13日まで臨時休館しているところです。最終的には4万4000人から4万5000人になるのではないでしょうか。対前年度で1万7000人から1万8000人は増えるので、現状ではまずまずではないかと思っています。

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