観光バリューチェーンの再構築に必要なこととは-JATAインターナショナル・ツーリズム・フォーラム2021

  • 2021年11月4日

求められる持続可能な観光
地域コミュニティと旅行者との新たな関係性を

JTB山北社長「地域と旅行者の双方が豊かになる観光を」

山北社長

 JTBの山北社長は、コロナ禍で起こった社会の変化として、国連のSDGsに主導されるサステナビリティへの関心の高まりを挙げ、「観光産業でも消費者が持続可能性を基準として商品やサービスを選ぶ時代が来ている」と指摘。そのうえで、地域と旅行者の双方が豊かになる観光を追求していく必要性を訴えた。

 また、ワーケーションやテレワークなどが進んだことで、今後は中央から地方への分散が起こる可能性に触れ、観光産業も地域の関係者と一緒に分散型や滞在型などの新しいスタイルを顧客に提案することで、ビジネスの拡大につながるとの考えを示した。

 さらに、オンラインとオフラインとの境界がなくなり、物理的な制約が少なくなる一方で、デジタルでは満たされないリアル体験の価値が見直されていると指摘。「今後は、デジタルか、リアルか、ではなく、双方を組み合わせた体験が顧客満足度を高めることになる」と話した。

 このほか、デジタル化によって消費者の価値観は大きく変化していることから、よりパーソナライズされたアプローチが求められているとし、「より本物の体験を提供していくためには、旅行の質を変えて、ビジネスパートナーや行政などと複合的に地域の価値を創造していくことが大切」と強調した。

 JTBは、地域のビジネスパートナーと同じ方向性を向き、地域の人々の流れを生み出すエコシステムを創出し、地域全体をテーマパークのように捉えていく考え。その取り組みとして、セールスフォースとのパートナーシップを挙げ、地域のビジネスパートナーと観光客をつなぐ地域コミュニティ型の協働プラットフォームを提供することで、観光産業を含む地域経済のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援していく。

 山北社長は「情報収集の段階から顧客のニーズを把握し、仕事につなげるのは容易ではない」としつつも、タビマエからタビナカ、タビアトを通じて、顧客との接点を強固にし、オンライン、オフライかを問わず関係性を深めていくことで、持続的な成長につなげていく考えを示した。