観光バリューチェーンの再構築に必要なこととは-JATAインターナショナル・ツーリズム・フォーラム2021
求められる持続可能な観光
地域コミュニティと旅行者との新たな関係性を
日本旅行業協会(JATA)は、「JATA Online Travel Mart」のキックオフイベントとして、「JATAインターナショナル・ツーリズム・フォーラム2021」を開催。パネリストとして、フィリピンのベルナデット・ロムロ・プヤット観光大臣、グアム政府観光局(GVB)のミルトン・モリナガ理事会会長、JTBの山北栄二郎社長を迎え、アフターコロナでの観光バリューチェーンの築き方について意見を交わした。モデレータは、JATA国際センター所長の古澤徹氏が務めた。
フィリピン・プヤット観光大臣「中長期的に地域の観光開発を」
フィリピンのプヤット大臣は、新型コロナウイルスによって観光業のバリューチェン全体に大きな影響が及んでいる同国の現状に触れたうえで、その対策として観光省が進めている「観光対応復興計画(VRRP)」を紹介。「ニューノーマルのなかで、国内観光業を持続的に回復させてくために、中長期的な対策と適切な対応に関する戦略を示し、旅行者の新たなニーズに対応していく」と説明した。
フィリピン政府は、2022年までに新しい観光バリューチェーンを再構築していくために新たな国家観光開発計画を策定する。その中には、地域コミュニティと旅行者との新たな関係性、安全で楽しめる観光地として競争力を高めること、自然や文化を生かした商品開発、次世代への利益誘導などが盛り込まれる予定。
プヤット大臣は「2022年の前半にかけて、雇用と生活を守り、地域コミュニティとの関わりを深めていく活動に焦点を当てるのと同時に、地域の観光開発を支援していく」と話し、その計画の方向性を示した。フィリピンは、観光バリューチェーンを再構築していくことで、「フィリピンを第2のふるさとと感じてもらえるような」(プヤット大臣)の高付加価値の観光を目指す方針だ。
このほか、持続可能な観光に向けた取り組みについても言及。そのひとつとして、人気の観光地ボラカイ島をオーバーツーリズムの課題解決のために6ヶ月間にわたって観光客の受け入れを中止したことを挙げ、「これからの観光は、人数や短期的な経済的利益を求めるのではなく、より回復力のある観光産業を確立していくことが重要」との考えを示した。
そのうえで、持続可能な観光には「世界的な協力が必要」と強調。「実現可能な長期的な解決策を見つけていくことが求められている」と付け加えた。
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