「腑に落ちる」PRと草の根戦術で新規顧客を呼び込む、一般社団法人B-biz LINK 堀景氏
観光案内所を起点としたインバウンド誘致
別府市独自のOTAもオープン
観光都市別府のDMO機能を担うB-biz LINK。ユニークなキャッチコピーやビジュアルでSNSなどでも話題を集めている。コロナ後には観光プロモーションから観光開発にシフトしていきたいという観光マーケティングチームマネージャー、堀景氏に話を聞いた。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)
堀景氏(以下敬称略) 別府市の産業と行政の間で潤滑油の役割を果たす目的で2017年9月に設立された一般社団法人です。当初は地域ビジネスプロデュースチームのみでスタートしましたが、観光地経営の視点でDMO機能が必要という考えから、設立の半年後に観光マーケティングチームが作られました。現在はプロパー職員4名、出向職員5名に加え、フリーランスの委託スタッフ5名、フリープラスという訪日旅行手配を手掛けるベンチャー企業から3名が配置されています。
堀 我々は別府市から、産業系のスタートアップ支援、創業支援、企業誘致といった命題を与えられており、「GENSEN」は名刺代わりの存在です。別府の若いプレーヤーや、大分県から飛び出して日本全国や世界で活躍されている方の考えをアーカイブしていくことで、彼らと現在市内にいるプレーヤーの卵とが繋がっていくことを目指しています。
堀 2019年のラグビーワールドカップ誘致は大きなトピックスでした。別府のインバウンドは、民間の旅館ホテルさんが韓国へ営業をかけたところから始まっています。その後客層は韓国を中心に東アジアに広がったのですが、ワールドカップをきっかけに欧米やオセアニアからも注目されるようになりました。2000年に立命館アジア太平洋大学が開校した際にも大きな変化が起きましたが、ワールドカップのインパクトはそれ以上で、街中に外国人の方が溢れる光景は壮観でした。ワールドカップを契機にいよいよ本格的にインバウンドが始まると思っていた矢先のコロナで、非常に残念に感じています。
堀 そうですね。例えば2019年にオープンした「WANDER COMPASS BEPPU」は、外国人観光客向けのサービスを強化した観光案内所です。日本人も含めアジアの方はタイトな旅行スケジュールを組む人が多く、観光案内所での質問も具体的です。一方、欧米に多い行程に余裕のある方は、「何をしたらいい?」という聞き方になります。そういったときにカウンターは邪魔。受け身でなく「能動的な観光案内所」を目指し、コミュニケーションを図る空間として作りました。
旅行ではまず、目的地にたどり着くことで満足度が100%に達しますが、その途中に人が介在することでそれが200%にも300%にも上がります。今の別府はお金をかけてデジタルマーケティングをしたり、海外にレップを置いたりといったことではなく、来てくれている方に対してできる限りの対応をすることで、行動変容を起こして消費を増やし、口コミで新しいお客様を開拓していく段階だと考えています。
観光案内所間の送客連携も進めています。欧米を中心とするアジア以外のお客様には広島という壁があるので、まずは九州に来てもらうのが第1歩。鎌倉に本社を置く株式会社Huber.と協同し、関西地域や広島、博多の観光案内所に別府の観光情報を共有し、別府にまで足を伸ばしてもらうという草の根の戦術を積み重ねています。