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「実験」重ね往来再開へ-シンガポール、MICE復活へ模範示す

  • 2021年2月26日

 1月10日から15日にかけてシンガポールでコンベンション「PCMA CONVENING LEADERS 2021」が開催され、日本から渡航して参加する機会を得た。このコロナ禍、しかも日本が2度目の緊急事態宣言に入ってからのことで、人的往来を再開していくのだというシンガポールの強い意志を感じた。各国が往来に厳しい制限をかけ、観光どころかビジネス目的の渡航も再開も1歩進んで1歩下がるような状態である中、シンガポールがどのような戦略を取っているのか。シンガポール政府観光局(STB)でMICE担当エグゼクティブ・ディレクターを務めるエドワード・コー氏とマリーナ・ベイ・サンズ(MBS)SVPのポール・タウン氏のインタビューを中心に、MICEの復活を軸としてまとめる。

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STB長官のキース・タン氏

「実験」繰り返し安全な開催方法確立へ

 金融や物流、人流のグローバルハブとして成長してきたシンガポールにとって、各国との往来停止は非常に大きな影響をもたらした。STBのコー氏によると、行動制限「サーキットブレーカー」の発令で11月までの累計訪問者数は約7割減少。観光消費額も同程度の影響を受けている。

 一方、現在は積極的に往来再開を推進しており、特に滞在中の行動を把握し制限しやすく、雇用など経済波及効果も大きいビジネス目的での渡航やミーティング、コンベンションからの再開に取り組んでいる。

 この点については、イベントのパネルディスカッションでSTB長官のキース・タン氏が説明しており、「シンガポールは世界でも成長著しいASEANに位置し、さらに素晴らしい企業、人々、アイディアにあふれている」ことから、「そうした人々を世界と結びつけるプラットフォームでありたい」と基本的な考えを紹介。米中対立など地政学的リスクが懸念されるなかで、国家間の対話のプラットフォームも目指すという。

 そしてその基本方針のもと、コロナ禍での往来再開は失敗を恐れずに「実験」を繰り返すことが重要であるとの考えで、リスクを最小化しながらMICEの段階的な再開など様々な試行を繰り返しているところ。具体的には、例えば毎日イベント会場に入る前に抗原検査を実施し陰性の結果が出ない限り参加を認めない、といった方策の有効性を実験を通して確認。タン氏は、こうした取り組みを通して最終的に世界のなかでコロナ対応の模範的な基準を示せる存在、「スタンダードセッター」を目指したいと意欲を語った。