「実験」重ね往来再開へ-シンガポール、MICE復活へ模範示す
往来再開のリスクは管理可能、テクノロジー活用も
コー氏は本誌取材に対し、タン氏の話す「実験」の前提として「往来再開は管理可能なリスクだ」とコメント。「セーフティファーストが基本」だと前置きしつつ、シンガポールが安定的に安全性を保ちながら積極姿勢を示すことで、諸外国から往来再開の相手国として選ばれやすくなるとの狙いも説明した。
これまでの具体的な取り組みとしては、昨年9月までに小規模なテストイベントを実施し、その結果として10月以降に最大250名までのイベント再開を決定。10月1日から開催計画の提出を求めたところ取材した1月13日の時点で約70件の申請があり、そのうち30はすでに成功裏に終了している。
イベントは主に国内の参加者をターゲットにしたものだが、今回のPCMAイベントは例外的に定員を超える300名を集め日本からも筆者が参加したほか、欧州などからもオーガナイザーらが「ビジネストラック(現地では相互グリーンレーン)」の仕組みで参集。また昨年11月末にも旅行業界の商談会「TravelRevive」も開催しており、こちらは合計1000名、うち65名が海外から参加している。
STBの「実験」におけるポイントは「アフターアクションレビュー」と呼ぶ評価システムで、「イベント開催後に何がうまくいって何がうまくいかなかったのかを確認」すること。例えば、昨年の再開後の初期段階では会場への到着時間を分散することで密を避ける必要を理解し、次以降に反映したという。
今後の方針としては、変異株への対応に迫られて一部で停止中ではあるものの、各国との相互グリーンレーンを推進する。そして特にMICEのリカバリーでは3つの分野に注力。これは「安全なイベント開催」「安全な旅程」「それらを可能にするデジタル技術」で、非接触化などテクノロジーの活用も進めるという。
テクノロジー活用については、「シンガポールはコロナに関係なく常に“サバイバルモード”。小国としていかに生き残るかを常に考えている」ため、利用できるものは積極的に使う姿勢が浸透していると説明。
このほか、MICEの中で日本市場で比重の大きなインセンティブについては、「MICEの中でも例外的でレジャー寄り。国境開放がカギ」との考え。現在も日本や中国、インドなどからの引き合いは多いものの、「いきなり1万人のグループを一度に受け入れることはできない。小グループに分割して順番に、となるだろう」と予想した。