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「実験」重ね往来再開へ-シンガポール、MICE復活へ模範示す

  • 2021年2月26日
MBSシニアバイスプレジデントのポール・タウン氏

MBS、政府と連携し素早い回復目指す

 マリーナ・ベイ・サンズ(MBS)からは、シニアバイスプレジデントのポール・タウン氏が取材に対応。STBと同じくコロナの影響を聞いてみると、サーキットブレーカー後にすべてのMICEイベントが停止するなど「ひどい影響を受けた」としつつ、「MICEとMBSがシンガポール全体の復興に果たせる役割を理解している」と回答し、これからの活躍に意欲を示した。

 今後のMICEイベントの回復見通しについては、「需要はコロナ前の水準に戻る」と予想しつつ時間はかかると回答。特にワクチン接種や国境開放の行方が焦点となるが、6月頃までには動向がある程度は判明するだろうと期待した。

 そのうえで、回復期において「シンガポールほどイベント開催に適したデスティネーションはないと思う。感染拡大は抑えられていてワールドクラスのベニューがあり、政府も強く後押ししてくれる」と言及。「最も早く回復するのはシンガポールだ」と自信を示すとともに、政府のコロナ対策や往来再開への取り組みに謝意を語った。

 また、コロナ禍のMICE業界ではイベントのバーチャル化、ハイブリッド化の議論が盛んになっているが、これについてタウン氏は「ベニューでのイベントの価値を置き換えるようなものではないが、ハイブリッドは今後重用されるようになっていく」と予想。これについてはSTBのコー氏も、「手軽に参加したいというニーズと、実際にリアルで対面して話をしたい、聞きたいというニーズの両方に対応できるので今後もメインストリームとして残る」との考えを示している。

 こうしたなかMBSでは、昨年8月に「ハイブリッド・ブロードキャスト・スタジオ」を開設。ステージは四角形の床を角が手前に来るようひし形に配置し、奥の左右の壁と床の3面に映像を投影できるようにしたほか、拡張現実(AR)、複合現実(MR)、そしてエクステンデッド・リアリティ(ER)の技術も対応し、例えば現実には存在しないグラフを配信映像では空中に表示し、出演者がそれを手で操作するといったこともできるようになっている。

ハイブリッド・ブロードキャスト・スタジオ。右奥のモニター上では地球儀が表示されている

 タウン氏は、このスタジオについて「コロナ後の最初はZoomの画面に顔が映っているだけで良かったが、もはや不十分。例えば会社の役員がこうした技術を使ってプレゼンテーションをすれば、リッチで魅力的なコンテンツを作ることができる」と解説。すでに社内のコミュニケーションでも従来型の1ヶ所に集めて語りかけるスタイルから切り替えて活用しているという。また、このほかコンベンション用のステージでも、世界の別の場所からホログラム映像やビデオ会議形式で登壇できる設備を備えている。

 なお、今後はMICEの世界でも各国でテクノロジー競争が活発化する可能性があるが、「我々がリードしていく自信がある」としたうえで、「同レベルの技術を備えていれば接続して中継することもできるのでむしろ歓迎。MICEコミュニティの中で我々の知見を広くお伝えする準備がある」と話した。

取材協力:シンガポール政府観光局、マリーナ・ベイ・サンズ
取材:松本裕一