オンラインの現状と課題は?航空会社とOTAがリアルな意見交換
トラベルポート主催、モバイル獲得の必要性と難しさ
クチコミ対策、不満解消策は?
トラベルポートジャパンは先ごろ、オンライン旅行会社(OTA)やオンライン販売を検討中の旅行会社を対象にセミナーを開催し、パネルディスカッションに航空会社2社とOTA4社が登壇した。冒頭でトラベルポートジャパン代表取締役の東海林治氏は、セミナーに参加した約70社の旅行会社関係者を前に、「第4次産業革命が起き流通も大きく変革している。旅行業においてもオンライントラベルが大きく伸びると思われる」と挨拶。そのうえで、パネルディスカッションでは「日本あるいは世界でプレーする代表的な企業の視点からオンライントラベル、デジタルに関する議論をお願いしている」とテーマを説明した。
日本航空(JL) グローバル販売部企画グループマネージャー 丸山貴史氏
ベンチャーリパブリック代表取締役副社長 柴田健一氏
エアプラス常務取締役兼CIO 今井行彦氏
エアトリ取締役 田村諭史氏
Ctrip Air Ticketing Japan International Business Unitゼネラルマネージャー 吉原聖豪氏
予約アプリに関するスタンスは
今回のパネルディスカッションは、トラベルポートが世界20ヶ国の2万3000人(過去12ヶ月間で2回以上海外旅行した人が対象、日本人500人を含む)を対象に実施した調査「グローバル・デジタル・トラベラー・サーベイ2019」の結果をディスカッションの題材として取り上げ、6名のパネリストによる議論を深める形で進められた。
調査で「予約時に利用する手段」としてPCを選択したのは51%で、モバイルが29%。全体の8割超がオンラインで予約していると回答したことになる。一方で店頭が13%、電話が7%とオフライン予約も2割を占めている事実が示された。これについて今井氏はエアプラスに関し「07年時点では電話予約が大部分だったが、サイト上で自己完結してもらえるよう改善を重ね現在は97%がオンラインになった。今後は通信環境の改善でモバイル比率が上がると思われる。しかし店頭や電話予約も完全にはなくならないだろう」と同意。
エアトリ田村氏も、同社では99%がオンライン予約、モバイルが60%を占めると説明したうえで、「トラフィックベースではもっと(モバイルの)割合が大きい。モバイルでサイトを見たユーザーをどうコンバージョンにつなげるかが喫緊の課題だ」と語った。また、吉原氏のCtripでは、「Ctripは電話や店頭では受け付けていないので完全にオンライン。そのほとんどがモバイルだ。日本の現状ではまだPCも多いが、将来的には7、8割がモバイルになるだろう」という。
なお、モバイルに欠かせないアプリに関しベンチャーリパブリックの柴田氏はアプリ開発の投資負担の問題を指摘。会社として割けるリソースとリターンをペイさせるのは簡単ではなく、アプリ開発という課題も「LINEと組んだ理由の一つだった」と振り返った。
一方、JLの丸山氏は「5Gでニーズが変化する可能性もある。必ずしもアプリファーストとは考えていない。米中5G戦争の行方も注視しつつ検討していく」とのスタンスを示した。
ブランディングの重要性とは
OTAの信用度について、調査では「どの会社を信用していいか分からない」と感じているのかどうかを質問。これに対する回答は「そう思わない」、つまり「信用できる」が30%、逆に「そう思う」が34%、「どちらでもない」が36%という結果を報告している。これについて柴田氏はメタサーチの視点から「メタサーチへの参加ブランドの信用度は、コンバージョンレートに如実に反映される。5倍の差はざらで、10倍以上の差もある。UI/UXの問題もあろうが、やはりブランディングの力は極めて重要だ」とする。田村氏も「前年度に過去最大の広告宣伝費を投入した結果、オーガニック流入が大幅に増大した。ただしCMコストを丸々回収できるかは別問題」とブランディングの難しさを指摘した。