噴火から1年のハワイ島、新素材で回復へ-固有植物など持続可能性にも注目
「溶岩に飲み込まれた街」、逆転の発想で観光地に
ハワイ島固有の植物や動物など自然も堪能
ハワイ州観光局(HTJ)はキラウエア火山が噴火から1年が経過した7月に日本の旅行会社を招いて現地視察を実施した。2018年5月に噴火したキラウエア火山は、同年9月には火山活動が休息状態になっており、現在は以前と変わらず観光ができる状態だが、日本人訪問者数は回復が遅れている。今回、視察に同行しキラウエア火山やハワイ島の観光新素材と期待されるレイラニ・エステートなどの様子をレポートする。
休息状態のキラウエアは安全
「火映」を失うマイナス要素も
ハワイ島への日本人訪問者数は、18年が前年比6.4%減の17万7479人となり、2019年上半期も22.7%減の7万5475人となっており回復が遅れている。こうした状況のなか、HTJ営業部長の酒井剛士氏は「昨年の噴火の際にハワイ島全体に影響があるような報道がされたが、実際は被害は一部のみ」で、印象の回復が重要だと分析。確かに今回の視察でも、現地に5日間滞在しハワイ島の観光地を訪れたが噴火による影響で危険を感じる場面はなく、観光客も通常と変わらない観光を楽しんでいた。
ただし、観光にまったく影響がないというわけではなく、例えば従来の人気観光素材だった夜の「火映」は、火口が崩落により直径が約900メートルから約2.4キロメートルまで広がったことで、見えなくなってしまった。視察では昨年10月に営業を再開した火口を見学できる宿泊施設「ボルケーノハウス」を訪れたが、ここでも現地のガイドから来訪者の減少が報告されたほか、また視察に参加した旅行会社からも惜しむ意見が聞かれた。
また、日本市場でハワイ島の火山と並んで人気なのがマウナケアの星空観賞だが、マウナケアの山頂に大型望遠鏡「TMT(Thirty Meter Telescope)」の建設計画について住民との協議がなされているため、現在マウナケアアセスロードの進入ができず、星空観測ツアーはマウナケア山麓でおこなわれている。
新たな魅力発掘へ、「被災地観光」の試みも
こうしたなかでの新しい観光素材として、逆転の発想で被災地を観光地化しようとするユニークな試みも。視察で訪れたのは、噴火の溶岩に飲み込まれた住宅地を土地のオーナー3名が観光地化しようとする「レイラニ・エステート」。噴火の際には、24のフィッシャー(亀裂)から溶岩が噴き出して700軒以上の住宅に被害を与え、特にフィッシャー8付近には高さ約18メートルの溶岩が積もり150軒の民家が被害を受けた。
被災地観光は不謹慎と考える向きも予想されるが、実際には被災者の数は2000人を超えたものの、もともと危機意識が共有されていたことに加えて溶岩流のスピードが緩やかだったため死者はゼロ。また、開発計画は元住民の理解を得ており、さらに収益の35%を復興資金として元住民に還元していく計画だ。
また、HTJの酒井氏も「日本マーケットは一度売れだすと一気の人が来る」ため、調整しながら不用意な負担を避けていく方針を説明した。視察に参加した旅行会社からは日本語対応の課題を指摘する意見もあったものの、「溶岩の熱気を感じることができるので素材としては良い」と火山、星空に次ぐ観光素材として期待する声も聞かれた。