空港整備予算のあり方と課題、航空連合がシンポジウム開催

「受益と負担の関係」から空港整備に政策提言
航空機燃料税の廃止を要望

プール制に内部補助の役割、空港高度化にも有効

航空局航空ネットワーク部長の久保田氏  パネルディスカッションでは、航空連合が廃止を主張する勘定のプール制について議論を実施。航空局の久保田氏は、「予算のプール制があるからこそ、全国の空港高度化を標準化できるので、現在でも有効だろう。航空機燃料税を軽減したことでプールする予算は減少したが、歳出を絞れば空港の高度化は実現できる。これはプール制でなければできないこと」と理解を求めた。

 慶大の加藤氏は、「コンセッションが進んでも赤字空港は多いため、プール制は必要では」と発言。一方で、「空港整備勘定は国の管理のため、地方は国に任せっきり」と指摘し、「もっと効率的なプール制の活用法を議論すべき」と提言した。

 前新関西空港元専務取締役の新堂秀治氏は、関空と伊丹のコンセッションに関わった経験から、「プール制には内部補助の役割もある」とした上で、「必ずしも民営化ではなく、それぞれの事情に合わせたコンセッションが必要だろう」と語った。また、ターミナルの老朽化対策について、「改修費を旅客サービス施設使用料(PSFC)から取るのが気になる。透明性がない」と疑問を呈した。

 島根県立大学総合政策学部准教授の西藤真一氏は、空港整備勘定ではなく、島根県を例に地方におけるプール制の意義について言及。「島根の出雲、石見、隠岐の3空港はそれぞれ役割が異なる。県全体の発展計画のなかで助け合っている」と話し、「プール制は誰かが誰かを助ける仕組みとして機能している」との考えを示した。

 このほか、加藤氏は「航空の世界だけ『整備』が『造る』という意味になっている。道路では整備は維持という意味」と指摘。空港整備に対する根本的な考え方に疑問を投げかけた。

 これに対し、久保田氏は「国の空港整備に対する考え方は大きく変わっている」と説明。1990年代の空港整備計画では、事業の実施によって得られる便益を分析するために費用便益比(B/C)を利用するという考え方はなかったが、現在はB/Cが基準を上回らない限り整備しない方針で、今後もその方針を継続していくとした。ただ、滑走路端安全区域(RESA)の整備については、「B/Cは馴染まない。安全面を優先する必要がある」との見解を示した。

航空連合会長の島氏  航空連合が設立されて今年で20年。会長の島大貴氏は、「これまでの空港整備勘定の変遷と航空連合の取り組みを振り返りつつ、現状における課題と行政の方向性などについて組合員と共有することが大切」と発言。今後も産業政策提言を発信し、航空関連産業の発展に向けた取り組みを強化する姿勢を示した。