空港整備予算のあり方と課題、航空連合がシンポジウム開催

「受益と負担の関係」から空港整備に政策提言
航空機燃料税の廃止を要望

コンセッションに課題、プール制の再検討必要

慶大教授の加藤氏  続いて、慶應義塾大学商学部教授の加藤一誠氏が講演をおこない、空港整備勘定の問題提起と論点整理をおこなった。加藤氏は、航空路線の削減や機材の小型化などで航空ネットワークの効率化が進み、国土交通省の羽田発着枠政策コンテストや地方航空路線活性化プログラムなどによって旅行需要が創出されている一方、航空系の事業が好調な空港と苦戦している空港に二極化していることを指摘。関空や伊丹などコンセッションにより民営化される空港が増えるなか、「事業が苦しい空港だけが国の管理として残る」と課題を挙げた。

 同氏が格付会社のムーディーズの債券格付基準を国管理空港に当てはめ、独立採算制で経営した場合の空港財政の健全性を表すランキングを算出したところ、新千歳、福岡、仙台など上位にランクインした空港はほとんどコンセッションによって国の管理から離れてしまうことから、空港整備勘定の歳出入の構造が変化していくという。

 コンセッションによって運営権の対価は「雑収入」として空港整備勘定に入るため、空港整備勘定の歳入は増えるものの、着陸料は各空港の特定目的会社(SPC)の収入となる。SPCは、維持管理のための人件費や経常的な工事を負担するため、空港整備勘定における空港の維持運営のための歳出は減少することになる。

 さらに加藤氏は、航空系事業の収入だけで空港全体の支出を賄うことは不可能と指摘。航空系事業が苦しい空港は非航空系事業も苦しいことから、「効率だけでなく公平という観点からも、全空港を独立採算制にすることは現実的ではない」とした。


航空連合、プール制を見直し、裁出入の透明化を

パネルディスカッションの様子  講演後のパネルディスカッションでは、航空連合副会長で政策委員長を務める岡田稔氏が、航空連合における空港整備勘定の見直しについて、考え方を説明した。航空会社は現在、航空機燃料税や着陸料などの公租公課を負担しており、徴収された公租公課は一部を除いて空港整備勘定に組み込まれ、全国の空港整備に使われている。公租公課は航空旅客運賃の一部として「受益者(利用者)負担」の原則のもと、乗客が負担。つまり、乗客が全国の空港整備の資金を負担していることになる。

航空連合としては、「国内の空港整備が概成した現在、プール制の枠組みで航空ネットワーク拡充と基盤づくりを目的とする空港整備勘定の役割は終わっている」との考えを示した。その上で、「今後はプール制を改め、歳出と歳入を透明化し、徹底した歳出削減をおこなって公租公課を引き下げることで、乗客への還元を進めるべき」と主張した。

 また、「原則的には新たな整備は必要ない」と語り、個別には福岡と那覇の滑走路増設は需要増への対応として進めるべきとした一方、中部は「さらに需要予測を精査すべき」として拡張には慎重な立場を示した。老朽化や耐震化については、建設から数年経っている空港を中心に、その必要性を強調した。

 その上で、航空連合の要望として、航空機燃料税の軽減と将来的な廃止を提言。理由として「空港整備と拡充のための税金投入は役割を終えている」としたほか、国内線運航会社のみが課税対象者であることなどから、日系航空会社と外国航空会社との公平な競争のためにも廃止すべきとした。また、空港の独立採算が進むなか、航空機燃料税を含む空港整備勘定の圧縮は可能であるとし、「財源のあり方を見直す時期に来ている」との考えを示した。