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「共感」で若者の海外旅行離れに歯止めを-JATA経営フォーラム

  • 2018年3月7日

旅行会社はビジネスモデルの転換を
店舗など活用しコミュニケーション強化

分科会の様子  日本旅行業協会(JATA)はこのほど開催した「JATA経営フォーラム2018」で、分科会「若者の心がつかめますか?~若者の趣向から読み解く商品開発~」を開催した。若者の旅行離れについては以前から旅行業界の大きな課題とされており、観光庁も昨年から「若者のアウトバウンド活性化に関する検討会」を開催し、阻害要因や今後の活性化のための方策について議論しているところ。旅行会社が若者に対し、どのような旅行商品やサービスを提供すべきかなどを議論した分科会の概要を紹介する。

・モデレーター
東洋大学 国際観光学部国際観光学科教授 森下晶美氏
・パネリスト
JTBワールドバケーションズ 執行役員マーケット戦略部長兼商品開発室長兼MD・RM推進室長 縄手伸弘氏
リサーチ・アンド・ディベロプメント(クロス・マーケティンググループ) ビジネスプロデューサー 堀好伸氏


「行きたいが行っていない若者」の取り込みを

森下氏  分科会ではまず、モデレーターで東洋大学国際観光学部国際観光学科教授の森下晶美氏が、若者の海外旅行の現状を説明。20代の出国率がピークを迎えた1996年の24.7%に対して、16年は2.2ポイント減の22.5%だったことを紹介し、「実際にはそう大きくは変わっていない」との見方を示した。一方で20代のパスポートの取得率は1989年の8.6%に対し、2014年は2.7ポイント減の5.9%に減少しており、比較する時期は違うものの、パスポート取得率の減少幅が出国率よりも大きいことを説明。リピーターが出国率を押し上げている可能性を指摘した。

 加えて、観光庁が15年度に高校生などを対象に実施した「若旅授業受講者の受講前アンケート」で、「海外旅行に行きたい」と答えた人が全体の67.7%だったことを紹介。「意欲は高いが、実際はそんなに行っていない」と語り、「海外旅行に『行く層』と『行かない層』に二極化していると言われるが、その間に『行きたいが行っていない層』が一番のボリュームゾーンとして存在している」と分析した。

 また「大学・専門学校生時代に海外旅行に行くか否かが、その後の旅行頻度に関わってくる」と語り、大学生や専門学校生が重要なターゲットであると主張。学生が旅行に行きやすい春や夏の長期休暇の旅行代金が高いことを問題視した。東洋大学で実施した、大学2年生と3年生を対象に実施したアンケートでも、「海外旅行に行けない理由」に対する回答の1位の「お金がない」は全体の63.7%にのぼり、2位の「時間がない」は16.7%にとどまったという。

 森下氏はこの結果について「本当に時間やお金がないわけではないと思うが、海外旅行に時間やお金をかけるだけの価値が見いだせていないのでは」とコメント。「海外旅行に行ってもらえるような価値の提供と、若者が旅行に行かない阻害要因の払拭が重要」と考えを述べた。

 JTBワールドバケーションズの執行役員で、マーケット戦略部長などを務める縄手伸弘氏は、JTB総合研究所の「海外観光旅行の現状2017」をもとに市場の概況を説明。同レポートでは旅行者を、2、3年に1回は海外に行く「海外旅行コア層(14.7%)」、国内中心で誰かに誘われたりすれば海外に行く「海外旅行ライト層(16.1%)」、国内中心の「国内旅行コア層」(31.3%)、誰かに誘われれば国内に行く「旅行ライト層(10.1%)」、旅行にあまり行かない「旅行無関心層(27.8%)」に分類しているが、若者の多くは「海外旅行ライト層」と「国内旅行コア層」に属していることを説明した。

 その上で、「若者は誘われれば海外旅行に行く。このような層をいかに取り込むかが活性化につながる」と主張。「若いうちに旅行会社を利用してもらわなくては、その後は使ってもらえない」と語り、生涯を通じて旅行会社を利用してもらうことを見据え、取り込みを強化する必要性があると強調した。