政府、民泊新法を閣議決定、年間180日まで営業可能に

 政府は3月10日、「住宅宿泊事業法案」(民泊新法)を閣議決定した。厚生労働省と観光庁による「『民泊サービス』のあり方に関する検討会」の最終報告書などを踏まえたもので、民泊サービスを「住宅宿泊事業」(民泊事業)と位置づけて、営業に関する届出制度を創設。年間180日までの営業を可能にする一方で、自治体の条例により事業実施を制限できるようにする。また、家主不在型の民泊物件を管理する「住宅宿泊管理業者」と、宿泊者と民泊事業者を仲介する「住宅宿泊仲介業者」についても登録制度を設ける。法案は3月中に通常国会に提出する予定。

 観光庁は、年間営業日数の上限については「関係団体と協議の上で決定したもの」と説明。管理方法については「『実際に宿泊した日数』を民泊事業者や仲介業者に申請してもらい、一元的に管理するシステムを作る」とした。なお、日本旅館協会や全国旅館生活衛生同業組合連合会などの宿泊業界団体は、年間営業日数については「事前に申請した180日のみ営業する」ことを要望していた。

 民泊事業者については都道府県知事への届出制とし、家主居住型の事業者には衛生確保や標識の掲示など事業を適正におこなうための措置を義務付ける。一方、家主不在型の事業者には標識の掲示のみを義務付けた上で、衛生確保などその他の措置を管理業者に委託することとした。

 管理業者は国土交通大臣への、仲介業者は観光庁長官への登録申請と許可取得を義務づける。また仲介業者については、宿泊者への契約内容の説明などを義務付けるとした。監督はそれぞれの届出・登録先が担当し、場合に応じて立入検査や業務方法の変更、登録取消、業務停止などを命ずることができるようにした。

▽Airbnbは歓迎コメント、JATAは「遵法営業を」

 今回の閣議決定に際し、仲介業者にあたるAirbnb Japanと百戦錬磨はコメントを発表。Airbnb Japan代表取締役の田邉泰之氏は「大変嬉しく思う」と述べた上で、「有休資産である空き家や空き部屋の活用で、多くの新たな機会が生まれる。地域社会に配慮し、持続可能な形で、ホームシェアを含む短期賃貸が全国に普及するよう、引き続き政府や関係者の皆様と協働したい」と述べた。

 百戦錬磨は「まずは新たなルールが守られることで“ヤミ民泊”が一掃される契機としたい」と述べた上で、同社がミッションとして掲げる訪日客の地方への誘客に言及。「古民家など歴史的資源の宿泊施設への活用などを通じて新たな宿泊スタイルを提供するほか、イベント民泊なども積極的におこないたい」と意欲を示した。

 日本旅行業協会(JATA)の広報室は「利用者の安心・安全のためには“遵法営業”が大前提」と強調した上で、「旅行ニーズの多様化への観点からは、民泊も選択肢の1つ」とコメント。一方で「旅行業界のパートナーである地方の旅館などは、厳しい経営環境にある。既存施設の経営が逼迫しないための支援や、違法行為の迅速な取り締まりなどの目配りをお願いしたい」と要望した。