サービス連合が初の政策フォーラム、産学官連携で観光立国へ
サービス・ツーリズム産業労働組合連合会(サービス連合)は2月9日、「第1回観光政策フォーラム」を開催した。同会が政策フォーラムを実施するのは今回が初めてで、ツーリズム産業に携わる約200名が参加した。冒頭で挨拶したサービス連合会長の後藤常康氏は、「我々はこれまでは働く者の視点から提言などをおこなってきたが、社会に対して新たな働きかけをすることが必要だと考えた」と開催の意図を説明。「今後もツーリズム産業を21世紀の基幹産業にするため、様々な働きかけをおこなっていきたい」と意欲を示した。
来賓として登壇した観光庁次長の蛯名邦晴氏はサービス連合に対し「これまでは提言という形で、今回はフォーラムという形で、様々な情報を発信していただき心から感謝している」と謝意を表明。「現場の方がいきいきと働ける環境づくりなどが、地域経済の活力につながる」と話し、サービス連合の提言などを踏まえ、観光政策を立案していきたいとした。
また、全日本交通運輸産業労働組合協議会政策推進議員懇談会会長の近藤昭一氏は「日本は観光資源があるのに、なかなか観光客に情報を発信できていない」と指摘。今後は産官学の連携で情報発信をしていきたい考えを示した。
フォーラムでは、日本総合研究所理事長および多摩大学学長を務める寺島実郎氏による基調講演と、「観光立国を推進するために、サービス・ツーリズム産業は今、何をするべきか」をテーマとしたパネルディスカッションを実施した。基調講演では寺島氏が、過去14年間の就業者の傾向として、製造業や建設業などからサービス業へ転職する人が増加しているが、年間の平均雇用者報酬を見ると、サービス業は製造業よりも186万円、建設業よりも178万円低い旨を説明。「現在の傾向は国民をより貧困化させる」と指摘した。
寺島氏によれば、現在のサービス業では、介護サービスやタクシー事業が占める割合が高い。寺島氏は、今後年間の平均雇用者報酬を向上させるためには「サービス業の主軸となるものが必要」と語り、「それがきっと観光になる」と観光の重要性を強調した。
同氏は、観光を主軸にするためには、旅行者、特に「ハイエンドのリピーターの獲得」が必要である旨を指摘。そのためには、今後は観光に深い知見のある人材の育成や、ビッグデータの活用が重要になるとの考えを示した。
このほかパネルディスカッションでは、観光庁審議官の古澤ゆり氏、日本旅行業協会(JATA)事務局次長の池田伸之氏、東洋大学国際地域学部国際観光学科准教授の矢ヶ崎紀子氏、井門観光研究所代表取締役の井門隆夫氏がパネリストとして出席。産官学の連携による人材育成の重要性を改めて確認するとともに、休暇取得についても議論をおこなった。
※訂正案内(編集部 2016年2月10日 10時30分)
近藤昭一氏のタイトルの一部に誤りがありました。お詫びするとともに訂正いたします。