成田と羽田、20年までに各4万回増枠可能-国交小委中間まとめ
国土交通省は7月8日、交通政策審議会航空分科会基本政策部会の下に設置された、首都圏空港機能強化技術検討小委員会による中間取りまとめを公表した。昨年11月から今年6月まで計5回にわたって実施された議論をもとに、羽田空港と成田空港の処理能力拡大方策などについて検討したもの。同委員会はその中で、2020年の東京オリンピック開催までに運用の見直しや機能の整備を進めることで、羽田は年間3.9万回、成田は4万回の増枠が可能との試算を示した。
同委員会では、羽田と成田の空港処理能力は今年度中に74.7万回に達し、アジアではトップクラスとなるものの、2020年代前半には航空需要が処理能力の限界に達することなどを踏まえて、発着枠の拡大方策を検討。また、政府の「日本再興戦略」などで明記された、アジアなど諸外国の成長力取り込みの観点からも、訪日外国人の増加や日本全国の地域活性化に対応した首都圏空港の機能強化について議論をおこなった。
羽田については、現在の年間処理能力44.7万回に加え、滑走路の処理能力や運用、飛行経路の見直しなどを再検証することで、2020年までに最大で3.9万回の拡大が可能とした。この数字は現在の処理能力の9%、2012年度の国際線発着実績4万回の98%に相当するという。
実現に向けた課題としては、関係自治体などとの滑走路や飛行経路に関する合意形成、騒音への対応、ターミナルビルなど施設面の増強、経路・空域面など管制運用上の課題の解決などを挙げた。また、2020年以降を見据えた方策として5本目の滑走路の建設を提案。技術的な精査が必要としたものの、増設により最大で年間約13万回の処理能力拡大が見込めるとした。
一方で成田については、現時点で地域と合意している年間発着枠30万回に加え、管制機能の高度化と高速離脱誘導路の整備を実施することで、2020年までに最大4万回の拡大が可能と分析。この数字は現在の処理能力の14%、国際線発着回数18万回の22%に相当する。あわせて、地域住民の理解を得て夜間飛行制限の緩和が実現すれば、さらに処理能力の拡大が見込まれるという。
2020年以降を見据えた方策としては、3本目の滑走路の増設を提案。セミオープンパラレル配置で建設した場合、年間16万回の処理能力拡大が見込めるとした。また、処理能力の拡大にはつながらないものの、既存のB滑走路を延長して運用実績を増加させることも、有効な方策として提案した。
これらに加えて小委員会では、両空港の有効活用に向けた方策として、羽田の国際線枠増加に向けた発着枠の見直しなども議論。日系航空会社の既存国内線枠の国際線枠への一部振り替えや、羽田の国内線枠の成田への移管などが提案された。しかし国際線枠への振り替えについては、回収した国内線発着枠を就航先の相手国にも配分する必要があること、成田への移管については、地域や利用者から維持を求める要望が強いことなどに留意する必要があるとし、各方面の理解を得る必要があるとした。
また、航空会社に自発的な移管を促すための、インセンティブ付与としてのスロットの競売実施などについては、発着枠の財産権的位置付けなど解決すべき課題も多いことから、今後の諸外国における議論などを踏まえて検討を続けるべきと提言した。
そのほかに小委員会では、米軍が管理する横田基地や、アクセス面で課題の大きい茨城空港、富士山静岡空港、福島空港など、首都圏周辺の空港および飛行場の活用の可能性についても議論。引き続き技術的な検討を進めるとした。
国交省は今後、引き続き小委員会で方策の精査をおこなうとともに、関係自治体や航空会社などの関係者と協議を実施する方針。あわせて周辺住民などの意見も聴取しながら、方策の具体化をはかるという。