第6回約款見直し検討会、受注型取消料を議論-JATA、実額精算を提案
「旅行開始後」定義など合意事項、早急に約款に反映へ
観光庁は12月12日、標準旅行業約款の見直しに関する検討会の第6回会合を開催した。検討会が開かれるのは1年10ヶ月ぶり。観光庁観光産業課長の石原大氏によると、今回は受注型企画旅行の取消料などについて議論を実施するとともに、第5回までで合意した内容の確認などをおこなった。
受注型企画旅行の取消料については、今回日本旅行業協会(JATA)側から提案として、海外、国内とも受注型企画旅行の現行の取消料表は使用し、例外規定として「一部を実額精算とする規定」を導入し、取消料表と併用する案が出された。旅行会社はどちらを使うか選択可能。実額精算の場合は、あらかじめ企画書面に取消条件を表示し、根拠として運送機関や宿泊施設といった各サプライヤーが定めた額、時期などの取消条件を記載した書面を提出する必要があるとしている。
JATAでは、受注型企画旅行の約9割が団体旅行であり、大量手配の際にホテルが予約金を求めるケースや、航空座席を大量に手配するためにIT運賃に比べて発券期限が厳しく取消料負担が大きいPEX運賃を利用せざるを得ないと課題を説明。受注型企画旅行は旅行者の希望に合わせたサービスの提供が求められるため、例えば取消料条件の厳しいホテルを指定された場合も手配をするが、その取消料などのリスクは旅行業者が負担している点も問題点としてあげた。
また、JATAは実額精算導入による消費者のメリットについても言及。現状では旅行業者は取消料の支払いリスク回避のため、取消料が厳しいサービス提供機関のみを受注型企画旅行契約と切り離し、手配旅行契約で結ぶ場合がある。手配旅行は旅程管理や旅程保証、特別保証制度の対象外であるため「消費者保護にはなっていない」という。しかし、実額精算を導入してリスクを回避することで、全行程を1つの受注型企画旅行として契約し、旅行業者の責任を明確化すれば、消費者にとってもプラスになると提案した。
一方、消費者側からは、取消料について2つの選択肢を旅行会社に与えることで、消費者の負担が増えるのではとの声があがった。また「JATAの提案する消費者のメリットについては理解できるが、消費者契約法との関係についてしっかり議論するべき」との意見が出された。
消費者契約法では、取消料について、同じ事業者で同種類の契約が解除された場合を想定し、その場合に事業者に発生する平均的な損害の額を超えるものは無効になるとしている。これを踏まえ、消費者側からは実額精算分が平均的な損害の額を超えるものか、という観点で議論がされておらず、現段階では判断できず、合意には時期尚早との見方が示された。
石原氏によると、標準旅行業約款の見直しに関する検討会は今回が最終回。受注型企画旅行については合意に至らなかったため、今後消費者庁と観光庁で調整のもと「有識者を招いたオープンの会議というよりは、少し人数を搾り、議論を続けて」いき、合意点を探っていく方針。また、今回議題にあがらなかった募集型企画旅行に関する改正案については、別途話し合いを進めていきたいとした。
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