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観光立国10年の課題-産業全体の問題点と課題を議論

  • 2013年2月19日

真の「オールジャパン」体制で国際競争力向上
省庁、産業超えた連携が急務

 ユナイテッドツアーズ代表取締役社長の越智良典氏は、国際競争力の議論の中で「『オールジャパン』の標語はいいが、本当に国をあげた体制になっているか」と問題を提起。国の予算について「インバウンドは100億円前後だが、外務省や文部科学省の交流事業、経済産業省のクールジャパンなどあわせると、大きな金額になる」と指摘した。

 その上で、イギリスや韓国など諸外国が国力アップの目標として導入している「国家ブランド指数」の6つの基準の1つに「観光」が含まれていることを紹介。「観光が上がれば国のブランド力が上がるということを認知させ、具体的な指数を目標に立てて省庁横断でプロジェクトを進め、国力を上げていく方向に持っていくべきだ」と主張した。

 連携強化については一橋大学大学院商学研究科教授の山内弘隆氏が「観光のバリューチェーンを総合的に見る必要がある」と同意。旅行業だけでなく産業全体を強化して世界的に日本の製品等が売れるようにし、利益を出す仕組みを作る必要性があると説く。

 一方で、日田市観光協会事務局長を務める佐藤真一氏は、「前提として、ここでの議論の方向性は同意することは多いが、地域で同じ話をしてもまず理解されない」と、現実的な問題を指摘。「観光には必ず、地域、地域住民が関わってくる視点を忘れないでほしい」と強調し、「2、3箇所に予算を絞り、どのように地域の現場が動いて連携をすればよいか、成功事例を作ってほしい」と訴えた。


将来はホテル王になりたい
大きな志を持てる“観光立国教育”を

 人材育成については、参加者全員が提起した課題だ。高等教育における高度な観光教育機関や体制変化の必要性をあげる意見のほか、ドン・キホーテのインバウンド&地域連携事業の推進責任者である中村好明氏は、「観光立国教育」の重要性を指摘。特に初等教育、中等教育で「旅の文化を伝え、旅をする市場を確保する。それをしなければ10年後、20年後の観光産業はない」とし、広い目線、未来を見据えた観光教育戦略の必要性を語った。

 東氏は、沖縄県が小学4年生から導入する観光教育について、「観光地を教えるのではなく、自分たちの宝を見ていくことだ」と紹介。「野球やサッカーを始めるとき『将来はプロ選手になりたい』と思う子どもが多く、親もそれを盛り立てる。観光も大きな夢を抱き、その夢を周囲が支えていくような教育が必要だ」と主張。「『このホテルに働きたい』だけでなく『このホテルの社長になりたい』と思って観光産業を望む人材が増えてほしい」との熱い思いを語った。

取材:山田紀子