LCCが生む需要-世界の事例と日本市場の将来性、JTBシンポジウム

  • 2012年9月18日

国内日帰り旅行が増加
スパ目的で物価差のある近隣諸国への旅行も

 次に豪州だが、国内線と国際線で状況がまったく異なる。まず、国内線は「2000年ではLCCはほぼゼロだが、その後ものすごい勢いでシェアが上がった」と黒須氏。市場の成長がダウンした時期にLCCが入り、伸びていった。座席数に占めるLCCのシェアは2011年には5割に達し、旅客数は2001年比で80%増。その増加分は、LCCが牽引している。

 ただし、黒須氏は宿泊者の延べ人数が、2000年以降、2011年にかけてゆるやかに微減していることを指摘。堀氏も「間違いなく日帰り需要が増えた。航空機による通勤需要が増えた可能性もある」と、航空と宿泊の需要が相関していない状況を説明する。黒須氏は、国内線利用の訪問者は増加したものの、自家用車や長距離バスの利用者が減少したというクイーンズランド州の調査結果を紹介し、「カニバリゼーションもあった」と指摘。「日本は短い休暇でコマ切れに旅行する国民なので、豪州の例が参考になる可能性がある」とも述べた。

 一方、国際線は2000年以降、提供座席数はFSAキャリアとLCCがほぼ半分ずつ伸びている。これについて堀氏は、「FSAが伸びたのは海外でのビジネス需要とほぼ相関しているところがあり、中東系航空会社の貢献がある」と説明。また、「90年代の海外からのインバウンド供給量の増加は間違いない。2000年以降はLCCも入ったが、オーストラリアの資源ブームがおこり、経済成長した時期。この2つの要因でアウトバウンドの海外旅行が増えた」という。

 豪州人の需要の変化について堀氏は「分かりやすい例では、特に予定がなかったような人が旅行や帰省をするというのが増えた」と説明。さらに、「目的が明確になった。例えば、スパをするために週末にLCCでバリに行く。バリでは豪州の4分の1、5分の1の価格でできる」とし、特定の目的を持って物価差のある地域へLCCで行く新しい需要が出ていることを示した。

 なお、日本/豪州間には2007年にジェットスター航空(JQ)が就航したものの、需要が伸びなかったことについて、堀氏は「JQの日本就航は、カンタス航空(QF)からの移管であるため」と指摘。また、座席供給量は片道ベースで現在は5年前の半分にあたる約60万席に減少し、日本の就航都市は5つから2つに縮小した。「座席供給量とゲートウェイの数が需要に大きく相関している。路線やゲートウェイの拡張が需要に繋がる近道」と強調した。

 また、牛場氏は日本/豪州間供給量の減少について、「日本の航空会社の供給が激減している。日本に比べるとコストの安いオーストラリアの航空会社が採算性を取っていることになる」と所感を述べた。ただし、「LCCとしているが、日本/豪州間は片道で4時間以上あり、極論するとLCCではない。(QFの)2ブラとして成功しているということではないか」とも言及した。