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LCCが生む需要-世界の事例と日本市場の将来性、JTBシンポジウム

  • 2012年9月18日

 公益財団法人日本交通公社(JTBF)が7月下旬に開催した海外旅行動向シンポジウム第2部は、「LCC参入は海外旅行マーケットのパイ拡大に寄与するか?」がテーマ。先進市場の事例をもとにパネルディスカッションを行ない、登壇者らはLCC参入後の日本市場の将来性に大きな期待を示した。ファシリテーターを務めたJTBF主任研究員の黒須宏志氏は、「将来起こりうる可能性のある客観的な材料を提供した」と、今回の議論が予測ではないとした上で「変化する競争環境、マーケットを今から想像していくことが、先々生き残っていく上で役に立つ」と語った。

ファシリテーター
JTBF主任研究員の黒須宏志氏

パネリスト
航空経営研究所副所長 牛場春夫氏
オーストラリア政府観光局日本局長 堀和典氏


LCCで新規需要が4割増
自由度望む旅客はLCCへ移行

左から)JTBF主任研究員の黒須宏志氏、オーストラリア政府観光局日本局長の堀和典氏、航空経営研究所副所長の牛場春夫氏  今回の議論では、LCCの先進市場の事例としてヨーロッパ(欧州)とオーストラリア(豪州)をとりあげた。「(LCCは)欧州では鉄道と競合している。日本の場合は欧州と似ている」「豪州は島国ではないが、日本と似てデスティネーションに行くのに飛行距離が必要になる」(黒須氏)からだ。

 欧州の状況を見てみると、ライアンエア(FR)が本拠を置くイギリスでは、航空市場全体が2000年前後にスピードダウン。その後、LCCの伸びが顕著だ。2010年には航空旅客数のうち、LCCのシェアが4割を超えた。牛場氏によると、FRは今まで交通機関を利用しなかった新規需要を40%創出したと説明しているという。FRの総需要のうち、FSAキャリアやチャーターから奪った需要が37%で、新規需要は59%。このなかに列車やバスなど他の輸送機関からのシフトが約20%あるため、まったく新しい需要は40%というのだ。

 英国全体の国際航空旅客タイプにも変化があった。目的別では2005年から親族や友人の相互訪問「VFR(Visit Friends and Relatives)」が増加。旅行形態では流通チャネルの変化で直接予約が増加し、旅行形態ではFITとセルフケータリングのパッケージが上昇した。

 黒須氏は「フルパッケージを必要とする需要はイギリスにも根強くいる。まず食われていくのは、自由度を高めることでメリットがある客層と解釈できる」といい、牛場氏も「そういう客はウィークエンドブレイクといわれる週末に行く旅行形態。その代わり、頻度が上がっていく。LCCが入ってきてハイパーモビリティがあり、旅行の期間が短縮化していくのは事実だと思う」とする。

 一方、英国の従来型の旅行であるチャーターに起こった変化だが、牛場氏によるとチャーター旅客1人あたりの区間距離は、2000年では1人あたり2600キロだったのが、2011年では3100キロに伸びた。「LCCにパッケージを取られたが、それは欧州内の短距離。どんどん長距離の旅行にシフトした」と、生き残るために起こった変化を指摘した。