LCCが生む需要-世界の事例と日本市場の将来性、JTBシンポジウム
短距離は爆発的に伸びる可能性
需要の“目的”が重要
最後にLCCが特集性のある日本市場で成長し、受け入れられるか。これについて牛場氏は「答えはイエス」と断言。「長距離は難しいが、短距離LCC市場は爆発的に伸びていくだろう」とし、その状況として「欧州と日本は地理的、文化的によく似ているので、欧州で成功しているところが日本にも入ってくる」とする。そして「LCCはFSAキャリアより低い運賃を出せば必ず大成功する。FRと同じように、新規需要を少なくとも4割は創ると思っている」と展望する。
すでに日本でもスカイマーク(BC)の例がある。牛場氏はBCの距離単価が日本で最低であるとし、「完全にピュアなLCC」と説明。2011年度の決算で日本航空(JL)を上回る19%の営業利益率を出し、ロードファクター80%弱も達成。牛場氏は「LCCモデルでちゃんと成功した。日本の需要にも受け入れられると思う」と話す。
旅行会社との共存については、黒須氏は前述の日豪路線の特殊性を指摘した上で、「学ぶことがたくさんある。そのひとつが販売チャネル。LCCは基本的に直販だが、日豪路線はハイブリット化されている」と提示。堀氏は「JQはいろいろな流通政策を持ち込んだ。最終的に落ち着いたポイントは、旅行会社にはアクセスの面で航空会社が必要、航空会社は販売チャネルで日本では旅行会社が必要だということ。そこで歩み寄り、新しいビジネスモデルを構築した」と応えた。
牛場氏は「現在のLCCの供給量は全体の10%程度だが、将来15%にあがってくれば、日本の市場ではLCCでも直販だけでは売れなくなる」と予測。「先を読み、LCCが参入しようとするときに、将来のWin-Winの関係を旅行会社と航空会社の両者で作ったらいい。今が絶好のチャンスだ」と提言した。さらに日本の旅行会社のパッケージ販売額が05年から3割強をキープしていることを示し、「日本市場はパッケージ旅行依存が高い。だからLCCも旅行会社が必要となる」という。
LCCの日本参入後に創出される需要への言及もあった。英国、豪州の先進市場の事例から、黒須氏は「成熟した市場では運賃の安さもトリガーを引くが、中身で言うとむしろ目的」とし、「そういう意味で、マーケットをリードするのは経験値の高い、ゆとりのある客が動き出す可能性がある」と話す。
その新規需要「第3の需要」として、英国ではメディカル・ツーリズムやレジデンシャル・ツーリズム、コミューターベルト、自分のルーツをたどる旅などが生まれた。日本ではそのまま当てはまらないとしながらも、可能性として「明確な目的型」「海外へ流出」「ライフスタイル」の3つのキーワードを提示。LCCにより促進されそうな旅行として「レジャー性のあるビジネス旅行」「一人旅」「VFR+@」「国内日帰り旅行」「海外弾丸旅行」をあげた。