現地レポート:チュニジア、地中海、イスラム、サハラなど多様性が魅力
地中海、イスラム、サハラなど多様な魅力が展開
周遊ツアーの利点高いチュニジア/2010年秋の取材より
次々と展開する多様な素材、コンパクトに周遊が可能
チュニジアの観光素材は、地中海の要所としての歴史を物語る「フェニキア・ローマの古代遺跡」、砂漠とオアシスの絶景が広がる「サハラの大自然」、古来からの生活様式を受け継ぐ「ベルベル人文化」、青と白の色合いが美しい「地中海リゾート」、混沌と喧噪が入り交じる「イスラムの旧市街」の5つに集約でき、日本の国土の5分の2ほどの範囲に収まっているのが特徴だ。参加各社のチュニジア商品のほとんどすべてが、上述の素材を組み込んだ周遊型のツアーだという。
今回は既存の周遊型ツアーをなぞったルートを通ったが、チュニジアの多面性を次々に発見していく光景が展開された。たとえば、都会的な街並みの首都チュニスを出て約1時間後には、ローマ帝国時代の大浴場が残る世界遺産のカルタゴ遺跡で、2000年以上前の紀元前の古に思いを馳せる。そうかと思えば、高台にあるシディ・ブ・サイドではリゾートの気分を味わえる。ここは抜けるような青空に白い壁が映え、装飾が施された扉や窓枠はチュニジアンブルーといわれる明るい青に塗られている。バスは入れず、坂道を徒歩で1時間ほどの散策になる。
ドライブを楽しみながら南下すれば、サハラ砂漠の起点となるトズールやドゥーズに到着する。トズールでは一般的に4WDに乗り換えて、山岳オアシスの3つの村を観光できる。現地ドライバーによる時速120キロ以上のスピードで疾走するドライブはスリリングだ。ドゥーズでは、ラクダに乗るアクティビティを体験でき、砂漠の雰囲気を味わえる。砂漠付近には、ベルベル文化が今も残るマトマタがある。ここでは地中に掘ったベルベル人独自のスタイルを持つ穴居住宅を訪問したり、映画「スター・ウォーズ」のロケ地となった「ホテル・シディ・ドリス」にも立ち寄る。
観光地と観光地の間の移動は、長くて5、6時間ほど。間に昼食休憩などを挟むため、無理なく周遊できる。主要な道路は舗装されていて、大型バスでの移動もスムーズ。体力的な負担が少なく、シルバー層を安心して送客できる」と、ある参加者は話す。また、「トイレが清潔」と写真に収める参加者もいた。
旅行会社の個性を生かしたオリジナルの商品造成を
周遊型ツアーの優位性を確認する一方で、課題となるのは商品の差別化だ。観光素材を網羅するだけの周遊型ツアーでは、廉価商品も高額商品もルートの重なりは避けづらい。観光地によっては食事を提供できる施設がひとつしかなく、同じレストランで食事をとることになる。大きな都市では宿泊施設のクラスで差別化できるが、小さな都市の場合は同じホテルを利用することもある。旅行中では自社商品の特性をアピールする方法も意見交換された。
たとえば観光素材を網羅するだけでなく、いずれかに特化するのもひとつのアイデアだ。現地手配を担当したアラビアン・アドベンチャー営業部長の門山浩志氏によると、チュニジアの遺跡はローマに残る遺跡よりも保存状態がよいものが多くフェニキア時代、ローマ帝国時代の遺跡は、ケルクアンの古代カルタゴ遺跡のほか、ドゥッガの遺跡やエル・ジェムの円形闘技場などがある。そこで、「遺跡めぐりを中心としたツアーを組み、『歴史街道』など心を惹くネーミングをするのもどうか」と提案する。
門山氏はそのほか、「砂漠に焦点を置くなら、ラグジュアリーなテントホテルでの宿泊体験や、アラビアンリゾートでの長期ステイ」「ベルベル文化に重点を置くなら、マトマタだけでなくタタウィンまで足を延ばしたツアーの造成」など、いくつかのプランも提案。「低価格勝負にせず、チュニジアを新しいデスティネーションとして大事に育てていきたい」と話した。
参加者は「現地を見たから課題が見つかった。研修旅行の収穫は大きかった」と口を揃えた。「現在のところ旅行者は、エジプトもトルコもモロッコも行ったから、次はチュニジアというケースが多いが、チュニジアが最初から選択肢に並ぶよう、旅行業界として認知向上に努めたい」と意見を交換した。