M&Aで宿泊・体験・交通へ拡大、羅針盤は何を目指すのか――佐々木代表に聞く成長戦略
AI、OTA、旅行会社との関係
佐々木 簡略化される部分は、より簡略化され、人を介さない場面は増えていくと思います。旅行者にとっては、言葉の壁が低くなり、旅行しやすくなるという意味で良い変化です。
事業者側は、AIを活用したサービスを出すのか、AIでは代替しにくい付加価値を磨くのか、その両方を考える必要があります。羅針盤としては、人が介在することで価値が出る「手触り感のある接点」を磨いていきたい。一方で、内部オペレーションではAIを活用しない選択肢はありません。業務効率化やコスト優位性の確保は、取り組まざるを得ないテーマです。
佐々木 現時点では考えていません。まずは裏側の業務で活用していくイメージです。ただ、将来的にはガイドのマッチングや案内機能など、活用していく領域は出てくると思います。
AI活用には情報セキュリティや誤動作のリスクもあります。どこまでの情報をAIに預けてよいのか、勝手に動くことで意図しない結果を生まないか。まずは使う側のリテラシーを高めながら、取り組む必要があると考えています。
佐々木 競合でもあり協業相手でもある、というのが実態です。例えば大手旅行会社とは、ガイド育成や自治体案件で協業することもありますし、競合になることもあります。私たちが持つサイクリングツアー、寿司握り体験、茶道体験などのコンテンツは、大手DMCや旅行会社が提案する際の素材にもなります。
今は市場全体を広げるフェーズです。シェアを奪い合うというより、各社が協力しながらインバウンド市場を持続的に成長させることが重要だと思っています。一方で、OTA依存は今後の課題です。宿泊はほぼOTA、体験も多くがOTA経由で集客してきました。今後は直販やBtoBも含め、集客ポートフォリオを最適化していきたいと考えています。
今後の展開
佐々木 短期的には、既存事業の競争力を高めることが最優先です。ホテル、体験、交通、地域プロデュースをそれぞれ強くしていきたい。その上で、飲食や物販、不動産、人材マーケットなどにも関心があります。
不動産については、基本的にはホテルが軸になりますが、目的地を作るために地方へ出ていく場合、伸びしろが大きい領域だと見ています。ホテルは箱が決まっており、稼働率で上限が見えやすい。体験もある程度上限が見えるビジネスです。一方で、出ていくエリアの不動産を先に所有し、次に入ってくる事業者に貸すような形も含めて考えると、事業規模は大きくなり得ます。まちづくりという点でも、自分たちで一定程度開発することで街の魅力を作ることができます。
人材については、観光産業全体の課題です。ホテルでは人手不足で稼働率を上げられないという話もあります。私たちはガイド人材のネットワークや育成ノウハウを持っているので、将来的にはホスピタリティ業界の人材育成やマッチングでも価値を出せるのではないかと考えています。
佐々木 インバウンド需要は大きなチャンスですが、一過性のブームで終わらせてはいけません。事業者がきちんと儲かり、その利益が人材の待遇改善やサービス品質向上に還元される循環を作ることが大切です。
羅針盤は、宿泊、体験、交通、地域プロデュースなど、現場に近い事業を複数持っています。それらを組み合わせ、旅行者に価値ある体験を提供し、地域に人とお金が流れる仕組みを作っていきたい。「旅の目的地を創出する」というビジョンのもと、日本の観光産業をもっと儲かり、もっと働きたい産業にしていく。その一翼を担える存在を目指します。

