M&Aで宿泊・体験・交通へ拡大、羅針盤は何を目指すのか――佐々木代表に聞く成長戦略

 訪日インバウンド市場が過去最高水準で拡大するなか、羅針盤が事業領域を広げている。ノットワールド、エアトリステイ等との合併を経て、宿泊、体験、地域プロデュースを展開してきた同社は、キャブステーションとアウテックの子会社化により交通領域にも進出。宿泊、移動、体験を一気通貫で提供する体制を整えつつある。

 ノットワールド時代から訪日向けツアーやガイド育成、地域支援に取り組んできた佐々木文人代表は、羅針盤として何を目指すのか。M&A戦略、交通事業への参入、旅行者ニーズの変化、AI活用、旅行会社や地域との関係について聞いた。

羅針盤 代表取締役の佐々木文人氏

ノットワールドから羅針盤へ

-まず、ノットワールドが羅針盤に合流した経緯をお聞かせください。

佐々木文人氏(以下敬称略) コロナ禍から水際対策が緩和されるタイミングで、今後の事業のあり方を検討していました。観光業界の事業者はかなり弱っていた一方で、国境が開けば観光客は一気に戻ってくるという見通しもありました。

 ただ、そのまま競争環境に戻った時、自分たちだけで十分なポジションを確保できるかというと難しい感覚がありました。大手とのアライアンスなども含めて模索する中で、ミダスキャピタルの代表で、元エアトリ共同創業者でもある吉村英毅さんから、複数社を組み合わせて新しくインバウンド領域で企業を作る構想をいただきました。吉村さんは大学の同級生でもあり、「ノットワールドも加わって、3社で一緒に新しいインバウンドの会社を作らないか」と声をかけてもらった。面白いチャレンジだと思い、羅針盤として新たなスタートを切ることを決めました。

-宿泊、体験、地域プロデュース、交通など事業領域を広げています。どのような企業像を目指しているのでしょうか。

佐々木 目指しているのは、ミッションである「日本の魅力で、世界を豊かに」と、ビジョンである「旅の目的地を創出し、日本の観光をリードする」の実現です。

 インバウンド領域にはOTAのようなレイヤーもありますが、そこではグローバルプレイヤーと正面から競争することになります。私たちが価値を出せるのは、むしろ現場に近い部分です。宿泊、体験、交通、地域コンテンツなど、旅行者との最後の接点を面として持ち、中小で非効率性も残る現場事業者を束ねていく。そこに成長余地があると考えています。

羅針盤 旅の目的地を創出
宿泊 COMPASS STAY
体験 Japan Wonder Travel等
交通 キャブステーション/アウテック
地域プロデュース 自治体・DMO支援
人材・ガイド ガイド育成・コミュニティ
集客 OTA依存から直販・BtoB強化へ
-「旅の目的地を創出する」というビジョンは、地方誘客にもつながります。

佐々木 訪日客数は大きく伸びていますが、東京、京都、大阪に集中しており、インバウンドの恩恵を日本全体が受けているとは言い切れません。私たちがいるからその地域に来てもらえる、つまり自分たち自身が「旅の目的地」になるような存在を作っていきたいと思っています。

 一方で、地方誘客は簡単ではありません。アクセスはボトルネックになりますし、どこに来ている人を、どこまで連れていけるのかは、旅行者の時間的制約も踏まえて考える必要があり、容易ではありません。

 ただ、例えば星野リゾートのように、そこ自体が目的地になり、人が来て、宿泊者が増える事例もあります。一定のコンテンツ力・ブランド力を蓄えれば、人の流れを変えることはできる。体験単体では収益化が難しくても、宿泊や交通と組み合わせ、その地域をきちんと作っていけば、地域の魅力を高めることは可能だと思います。

-将来的には、宿泊施設や不動産も自社で押さえていくのでしょうか。

佐々木 全ての不動産や箱を自社で持つとなると、重くなりすぎて機動力が落ちます。一方で、地方で自分たちが一定のセットを持ち、そこが盛り上がることで地価や不動産価値が上がるというのは、一つのマネタイズポイントになり得ると思っています。

 ただ、それを私たちだけでやる必要はありません。連携する事業者と一緒に取り組むことで、5倍、10倍のスピードで、5倍、10倍魅力的なコンテンツを地域に揃えられるかもしれない。そうしたネットワークを広げておくことも、「目的地を創る」上では非常に大事だと考えています。

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