海外教育旅行シンポジウム、専門特化型ツアーなど9事業を紹介 工業高校の進路直結プログラムも
とがった提案も採択、横展開が課題
一方で、今回の採択事例には専門性や独自性が高い「とがった」提案も多く、これをどう横展開していくかも課題として示された。
東武トップツアーズ仙台支店と聖ウルスラ学院英智高等学校によるフィリピンのプログラムは、ミンダナオ島の児童支援施設「House of Joy」での孤児やストリートチルドレンの自立支援活動を通じ、福祉や社会課題を学ぶもの。現地の貧困構造や教育格差に直接触れることで、「幸せとは何か」「自分にできることは何か」といった問いを生徒に投げかける。
アドバイザーを務めた宍戸氏は「自らの無力さを知ることがキーワード」としたうえで、「無力さを感じるだけでなく、それを自分事としてどう捉えるかが事前・事後学習において欠かせないこと」と指摘。学校が有していた海外ネットワークや経験を深化させた内容だけに横展開は課題としつつ、「軸となる活動を押さえ、さまざまオプションを設けており、他展開できるようにとした工夫が見られる」と評価した。
新たな海外教育旅行先としてモンゴル、安全性への配慮も重視
今回採択されたプログラムでは、新たな海外教育旅行先として、東武トップツアーズ札幌支店と立命館慶祥高等学校がモンゴルを取り上げた。モンゴルは理数系教育を国家戦略としているため、今回はSTEM交流プログラムとして現地教育機関と連携し、共同研究や実習、プレゼンテーションを実施。視察に訪れた担当者は、モンゴルは急速な都市化や環境問題、日本人抑留の歴史など探究素材の多さから「新たな教育旅行先として多くの可能性がある」とした。
アドバイザーを務めた日本認定留学カウンセラー協会代表幹事の星野達彦氏は「日本にあまり知られていないモンゴルを選んだ点が素晴らしい。今後の双方の交流活性化につながれば」と期待を示した。
カモメツーリストと新渡戸文化中学校・高等学校によるインドのプログラムでは、哲学や宗教、多様な文化に触れながらウェルビーイングを探究する内容を用意。経済成長と社会格差が共存する環境に身を置くことで、生徒が価値観や社会構造を体感的に理解できるよう心がけたという。
実施にあたっては特に安全面に配慮し、移動にはトイレ環境が整備された新しい高速鉄道を利用するなど工夫。アドバイザーを務めた高野氏は「保護者を含めた安心感の担保はしっかりすべき」としたうえで、「日本とのギャップが大きいインドでの体験は子どもたちにとって学びがある。さまざまな学校にインドでの海外教育旅行に挑戦してもらいたい」と呼びかけた。
タイでは実施事例を紹介、高い満足度が特徴
インドと同じく「ウェルビーイング」をテーマにしたのが、JTB茨城南支店と茗溪学園中学校高等学校のタイでのプログラムだ。ウェルビーイングという抽象的な概念について、現地校との交流やフィールドワーク、ホームステイを通じて自己理解と社会理解を深めつつ考えるプログラムとした。生徒が自らテーマを設定し、調査・発表を行う探究型の構成とした点も特徴だ。
実施後の学生へのアンケートでは98%が「非常に充実していた」と回答。「人生において得難い体験」「価値観が変わった」との声が多く寄せられた。特にホームステイではタイのもてなしの心への感動に加え「アニメや恋バナで盛り上がった。万国共通で同じ人間なんだと思った」などのコメントがあり、担当者は人との繋がりが生徒たちに響いたのではと分析している。
このほか、エモック・エンタープライズと開智中学・高等学校のプログラムでは、チェコとオーストリアを訪問し、「海外から見た日本の魅力」に焦点を当てた交流を実施するプログラムを策定。日本語や日本文化を切り口に現地学生と交流し、文化理解を深める機会を設けた。
アドバイザーの高野氏は「海外から見た日本の魅力というのにポイントを当てたのが面白い観点」と評価。「現地語や英語ではなく日本語での意見交換により改めて日本を知る取組はありそうでなかった」と話した。
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