星野リゾートは予約サービス「FleBOL」で何をめざすのか-18億円を投じて自社基幹システム開発に踏み切った理由とは
星野リゾートは昨年10月23日、自社開発した新しい宿泊予約サービス「FleBOL(フレボル、Flexible Booking On Line)」をリリースした。公式サイト経由の予約完了後に人数や部屋タイプ、宿泊プラン、日程を変更できる点が特徴だ。同サービスの実現に向け、自社製の新たな基幹システム「HOP4(Hoshino Resorts Operation Platform 4)」も開発し、投資額は18億円にも上った。
なぜ星野リゾートはこれほど大きな投資を行い、自社でシステム開発に踏み切ったのか。同社情報システムグループグループディレクターの久本英司氏に、開発の意図や今後の展望を聞いた。
久本英司氏
久本英司氏(以下敬称略) FleBOLは「Flexible Booking On Line」の名の通り、お客様が自由に予約を変更できる予約サービスです。発想としては、ECサイトの「お買い物かご」に近いものです。
ホテルの場合、予約からチェックアウトするまで体験が続きます。そこで、ECサイトの「お買い物かご」をイメージし、お客様が宿泊予約後からチェックアウトするまで、客室や食事、アクティビティなどの滞在体験を1つのカートから自由に出し入れできるようなイメージで、サービスを設計しました。
そのためには、内容を出し入れした際に、お客様に納得してもらえるキャンセル料を決める必要があります。これまでは、細やかで妥当性のあるキャンセル料を算出し、請求する仕組みがありませんでしたが、FleBOL導入を機に見直しました。こうした一連の変更には、元となる仕組みそのものを作り直す必要があり、基幹システムの自社開発にも踏み切りました。
久本 ホテル業界はもともと「旅行会社で予約を取り、運営を担うホテル運営会社に通知する」というビジネスモデルからスタートしており、システム的にも予約機能と運営機能が明確に分かれています。この前提を変えない限り、FleBOLの提供は難しいと考えました。
実は2009年に、今のFleBOLにつながる構想として、お客様自身が自社サイト上で体験を組み合わせ、旅程を作る機能を試作し、1施設で試験導入したことがあります。ただ当時は、新規予約時のみ体験を自由に組み合わせられる仕組みで、予約後の変更は予約担当者が手動で対応する運用でした。
ところが、お客様は「チェックインまで自由に変更できる」と受け取り、プランや食事内容の変更などの問い合わせが予約窓口に殺到しました。公式サイト上の機能と、予約担当者が使用するPMS(ホテル管理システム、Property Management System)との間で、データ連携では変更対応ができなかったことが原因でした。この経験から、予約機能だけを先行させても、PMS側で同じ操作ができなければ、お客様に十分なサービスを提供できないことが分かりました。
そこで、予約機能をPMSに適切に反映させる仕組みづくりについて、PMSベンダーと検討を重ねました。しかし、自由度の高い変更を実現するにはカスタマイズのコストが大きく、開発にも時間がかかります。結果として、自社で仕組みの前提から見直す必要がある、という判断に至りました。
その後、星野リゾートの戦略として、自由な予約体験の提供よりも、自社予約比率の向上と新規顧客の獲得を優先する方針へとシフトしました。ビジネスニーズの低下により、自由な予約体験関連機能の開発はしばらく休眠しますが、この間、自社サイトの改善や事前クレジットカード決済機能の導入などに取り組みました。その結果、自社予約比率は開始時の10%以下から、平均約70%まで高まりました。