星野リゾートは予約サービス「FleBOL」で何をめざすのか-18億円を投じて自社基幹システム開発に踏み切った理由とは

-FleBOLを再び検討しはじめたのはいつからですか
FleBOLサービスイメージ

久本 自社サイト経由の予約比率が高まり、それをどう維持していくべきかを2019年頃から考え始めました。そのタイミングで新型コロナが発生し、具体的な検討にまでは至りませんでしたが、改めて本格的な話し合いを始めたのは2022年頃からです。

 星野リゾートは「世界に通用するホテル運用会社になる」というビジョンを掲げています。グローバルチェーンをはじめ、多くのホテル事業者がOTAに依存したエコシステムの中にいる一方で、自社サイト比率の高さは当社の強みになると考えました。

 また、グローバルOTAがIT投資を進め、存在感を強めるなかで、彼らとうまく付き合いながら、どう生き残っていくかを考えたときに、OTAが構造的に実現できない「宿泊予約の自由な変更」に踏み込もうと考えました。そこで、FleBOLの構想が再び浮上しました。OTAは予約に特化した仕組みであり、予約によって確保した在庫を減らすことはできても、一度確保した在庫を取り直す仕組みは、システム構造上、実現が難しいのです。

 その背景には、世界のホテル流通システムが、長年にわたってつぎはぎ的に拡張されてきた歴史があります。世界のホテル市場は軒数的には独立系が多く、チャネル間のデータ連動に関しても統一された規格がありません。さらに、予約機能と運営機能が分断されているため、OTAが自由な予約変更を実現しようとすると、世界規模で仕組みを組み替える必要があります。当面は現実的ではないでしょう。一方で星野リゾートには、自社予約比率が高く、システムを自社で開発できるというアドバンテージがあると考えました。

-宿泊予約の自由な変更を実現させるために「HOP4」の開発に至ったのですね

久本 宿泊予約と施設運営を統合する仕組みを実現するには、基盤そのものを置き換える必要がありました。そのため、既製のPMSに代わり、プラットフォーム基盤として「HOP4(Hoshino Resorts Operation Platform 4)」を開発しました。

 HOP4は、情報基盤として一貫したデータを持つプラットフォームで、その上にお客様向け、運営スタッフ向けといったアプリケーションが乗る構造です。FleBOLは単独のシステムではなく、HOP4の上で提供される予約サービス、という位置づけになります。

-AI時代への備えとしての意味もあるのでしょうか

久本 AIの進化が加速するなかで、HOP4の設計が将来に耐えうるものになっているかを、改めて検討しました。AIは、利用可能な情報をもとに予測・推論し、結論を導き出す仕組みです。そのためには、一貫したデータの蓄積が前提になります。お客様の予約・購入から満足度までを一貫して把握できるよう、予約と運営の情報を分断しない仕組みは重要だと考えています。

 自社が保有する顧客満足度などの内部データを、将来的にどのようにAIへ渡していくかは、これからの検討課題です。ただ、そうした議論ができる状態には、すでになっています。

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