アウトバウンド促進で再び官民タッグ、「もっと!海外へ宣言」で早期の2000万人回復へ

 観光庁は3月24日、海外旅行需要の喚起を目的に外務省と日本旅行業協会(JATA)と共同で「もっと!海外へ宣言」を発出した。アウトバウンド分野における官民共同の取り組みは2023年5月にも「今こそ海外!宣言」とそれに続くキャンペーンを実施したが、インバウンドがコロナ禍での落ち込みから急回復する一方でアウトバウンドは円安などの影響から停滞しているなか、改めて機運の醸成をめざす。

(左から)JATA会長の髙橋広行氏、観光庁長官の秡川直也氏、外務省領事局長の岩本桂一氏

 発表記者会見で観光庁長官の秡川直也氏は、「アウトバウンドの促進は国際感覚の向上や国際相互理解の増進など非常に意味がある。インバウンドと両輪で進めていくのが大事」であるとし、2024年の出国者数が5年ぶりに1300万人を超えたものの2000万人台には及ばない現状に触れたうえで、3月24日から新しいパスポートの発給が開始され4月には大阪・関西万博が開幕するなど海外への関心が高まりやすい「絶好の機会」を捉えて、宣言とキャンペーンによって需要喚起を実現したい考えを示した。

 またJATA会長の髙橋広行氏も、「ITの進化によって世界中の観光情報に容易にバーチャルで触れることができるようになった一方で、リアルの体験でしかえられない、本物の実感価値が見失われつつあるように思う」とし、「そのような状況だからこそ、その国の自然や歴史や文化、食、人々との交流、実際の五感で感じ感動を得られる海外旅行はかけがえのない貴重な機会になると確信している」と言及。

 そのうえで、「特にこれから日本の将来を支える若者の皆様方にはこの機会に是非海外に羽ばたいていただいて国際社会への理解や体験、経験を深めていただければ」と期待を語るとともに、「様々な取り組みを通じて、今年こそはなんとしても海外旅行の完全復活をめざして業界を挙げて取り組んでいきたい」と意欲を語った。

 宣言では、「新しいパスポートの普及」「海外旅行促進キャンペーン」「若者の国際交流の促進」「現地安全に関する情報提供」「関係者と連携したプロモーション」を中心に官民一体でアウトバウンド促進に向けた取り組みを進めると明記。具体的には新パスポートの取得をサポートするキャンペーンや、外務省の「たびレジ」と旅行会社の連携などを予定しているほか、ダンサーや俳優、歌手として活躍する岩田剛典さんをJATA海外旅行アンバサダーとして起用し特に若年層の需要の掘り起こしをめざす。

キャンペーンロゴ

 キャンペーンでは、JATAに加盟する旅行会社36社と空港会社6社がそれぞれ独自の新パスポート取得サポートキャンペーンを実施。5000円から1万6000円程度の間で各社がキャッシュバックやポイント付与、次回利用時の割引などの特典でパスポート取得費用の負担感を軽減する。詳細は特設サイトで案内しており、開始時点での各社の計画値を合算すると総額で約2億円、2万5000人程度の規模となる。

 また、それとは別にお得感のある旅行商品や航空券、旅行関連グッズなどのキャンペーンも集約。特設サイトでは観光局や大使館が提供する観光情報も発信する。このほか、宣言の「現地安全に関する情報提供」では観光庁の「ツアーセーフティーネット」の利用を促進するとともにたびレジと連携する旅行会社数の増加をめざす。こうした安心安全への取り組みは、旅行会社を使って海外旅行に出るメリットを生み出す意味でも重視しているという。

 なお、キャンペーン期間は2026年3月末までで、今後も機運醸成に向けた様々な取り組みを積み重ねていく考えだ。参画する会社数も今後増加を期待している。