日本文化の魅力を世界へ、みたて庄司英生氏が描く観光ビジネスの戦略 DMOの課題は?

  • 2025年4月4日

 インバウンド市場が成長を続ける中、新たなビジネスモデルで日本文化を世界に届け続けているのが「みたて」創業者の庄司英生氏だ。これまで日本文化体験事業からDMCの運営、日本酒のプロデュースまで、独自の視点で市場に挑む同氏が見据える今後の展望は。これまでの軌跡とともに話しを聞いた。

-まずは経歴についてお聞かせください。

庄司 英生氏(以下敬称略) セルビアのベオグラードで生まれ、4か月後には帰国し、その後は兵庫県神戸市で育ちました。新卒で人材派遣会社のパソナに入社し、営業職として東京で勤務。その後、ERP(統合業務パッケージ)システムの導入コンサルティングを行うIT企業に転職し、営業戦略や専門知識を学びました。IT関連は未経験だったため苦労もありましたが、3年間在籍し、業務をこなせるようになった一方で、次第に情熱を持てなくなっていきました。そこで、パソナ入社時にも感じていた「いつかは起業したい」という思いから、2005年にリクルートへ転職し、2014年まで在籍しました。

-旅行業界に携わることになったきっかけは。

庄司 リクルート在籍中、35歳を迎える頃に「フロンティア制度」というキャリアを見直す機会がありました。その際、自分が本当にやりたいことを考え、「国際的なビジネスマンになりたい」という思いに至りました。海外経験がほぼ皆無だった私にとって、インバウンド業界は外国人と仕事をし、国際的な視野を広げる絶好の場だと感じました。当時、インバウンド市場は急成長しているものの、経験者が少なかったため、これまでの営業スキルで勝負できると考えました。

-みたてを設立された背景や初期のビジョンについて教えてください。

庄司 2014年、京都市東山区の町家を借りて「みたて」を創業しました。社名の「みたて」は、茶道の「見立て」という言葉から取っています。これは、見慣れたものや出来事を別の角度から捉え、新たな価値を見出すという意味があります。訪日外国人に日本文化を体験してもらう際、この「見立て」の技術がカギを握ると考え、一生かけて磨き上げていこうという思いで名付けました。

 事業は、京都の町家で茶道、書道、華道、料理、利き酒などの日本文化体験プログラムを提供することから始めました。しかし、事業のスケール化が難しいと判断し、3年目に事業譲渡を決断。その後、2017年にリクルートの「じゃらんリサーチセンター」から声をかけていただき、コンサルタントとして某DMOの仕事に関わりました。海外市場に向けたプロダクト開発とマーケティングを進める中で、日本にはインバウンドに対応した旅行会社(DMC)が決定的に不足していると痛感し、DMCとしての活動を開始しました。ちょうどそのタイミングでコロナ禍に突入し、事業は一時停滞しましたが、2023年から再開しました。また、コロナ禍では日本酒「朔」のプロデュースにも取り組み、フランスの日本酒コンクール「Kura Master」でプラチナ賞を2年連続受賞するなど、新たな挑戦を続けています。

-DMC事業では、英国をはじめとしたBtoBに販路をお持ちとのことですが。

庄司 当社はほぼ100%インバウンドビジネスで、BtoBに特化しています。海外の旅行会社と提携し、そこからお客様を送っていただいています。旅行会社は直接訪問して開拓していますが、もともとは某DMOのプロダクト造成事業に携わる中で、ユニークな商品を作っても売れないという現実に直面し、なぜ売れないのかを直接聞くために単身英国を訪れたのが始まりです。

-当時の英国での調査で得た気付きがあれば教えてください。

庄司 旅行商品の魅力には「ユニークさ」と「売りやすさ」の2軸があることに気付きました。特にBtoBでは、旅行会社が「売りやすい」ことが重要です。しかし、日本ではユニークさにこだわり、トリッキーすぎて売りにくいことが多いのです。

 新しい商品であればなおさら、まるごと手配可能だったり、手配しやすい形でないと取り扱ってもらえません。例えば、かつて明石の漁港で競りを体験し、神戸(灘)の酒蔵で古酒を買い、有馬温泉でディナーを楽しむツアーを企画しましたが、ユニークだと言っていただいたものの、売れていません。一方で、現在人気なのは早朝の大阪の中央卸売市場を巡り、「食いだおれ」文化を体験するツアーです。後者は自社ガイドで催行するため年間を通じて提供しやすく、BtoBのニーズに合致しています。

 また、BtoBとBtoCでは売れる旅行商品に違いがあると考えています。BtoBに関しては、まだ世に出ていないものが強く、旅行会社側としてもユニークな商品として訴求しやすいと考えています。