日本文化の魅力を世界へ、みたて庄司英生氏が描く観光ビジネスの戦略 DMOの課題は?

  • 2025年4月4日
-日本酒のプロデュース事業の成功の要因は何だと考えていますか。

庄司 私たちは、「できた日本酒を買う」のではなく「日本酒ができていく過程を買う」体験を商品として販売していて、購入いただいた方を対象に、田植えや中秋の名月を観る会、稲刈り、酒蔵訪問などのイベントを提供しています。こういった酒造りのプロセスを含めて商品化する取り組みが珍しいことや、また、冒頭に申し上げた賞をいただいたことが大きな追い風になりました。目新しい企画とともに、品質の高さが両立したことが成功の要因です。

 また、通常販売される最高級の酒は3000円程度ですが、私たちの日本酒は1本6600円で販売しています。日本酒の価格は総じて安すぎると感じていて、製造工程やかかるコストを考えたら、もっと適正な価格設定が必要だと思います。その価格差はどのようにすれば埋まるのかを日々考えており、実際に、酒蔵さんにとっても新しい市場の開拓につながっています。

-将来的に他の酒蔵さんと一緒に何かやるご予定はありますか。

庄司 やりたいと思っています。地域ごとに独自の酒文化があり、日本酒はその土地の食文化を伝えるストーリーテラーとして、とても有効だと思います。

 まずは今の事業をしっかり固めた上で、他の地域の酒蔵とも連携し、さらにはその周辺地域へのインバウンド観光の促進までを視野に入れたいと思っています。

-訪日旅行PR事業を手掛ける「Japan-san」についてお伺いします。なぜこの名前をつけたのでしょうか。

庄司 この名前をつけたのは、当時ロンドンの日系旅行会社に勤めていたイギリス人の友人です。彼は、日本のDMOの英国向けプロモーションが的外れであることに課題感を持っており、コロナ化をきっかけにその解決をしたいというので、共同で会社を立ち上げました。sanは日本人が使う敬称の「さん」で、海外の旅行会社に対して「ジャパンの専門家」と一言で伝えられる名前として「ジャパンさん」と名付けたんです。正直、最初はダサいと思いました(笑)。もっと違う名前がいいのではないかと提案しましたが、彼は「これがいい」と言い張って、そのまま決まりました。

-次に、DMOのあり方についてもお聞きしたいのですが、庄司さんは税金の使われ方に問題があると指摘されていますね。

庄司 基本的には現場を知らない人が考え、しかも担当者が3年ほどで入れ替わるため、一貫性のある戦略が取れていないと感じています。成功しているDMOは、行政主導ではなく、民間の感覚を持った人が継続的に運営しているケースが多いんです。

 例えば「海の京都DMO」は、プロパー社員が中心となり、担当者が変わらず継続的にマーケティング活動を運営しています。先駆的DMOの田辺市熊野ツーリズムビューローも同じですね。インバウンド向けのマーケティングに成功しているDMOでは、マーケットのニーズを理解する人材を長期的に配置しているため、海外の旅行会社から「この地域については◯◯に相談すればいい」と認識されています。

-庄司さんご自身がDMOの「顔」になることは考えていませんか。

庄司 私はそういう役割ではないと思っています。ただし、適任者と行政をつなぐ役割を担う可能性はありますね。私の目的は、ユニークで売りやすい商品を作り、それを正しい価格設定でで提供し、地域全体が潤う仕組みを作ることです。

-最後に、トラベルビジョンの読者の方々に向けてメッセージをお願いします。

庄司 最近「日本は終わっている」と言われることが多いですよね。特に若い世代の間では。しかし、実際に海外の人たちが日本に来ると、皆とても楽しんでくれますし、「素晴らしい国だ」と言ってくれます。もちろん日本に課題は多くありますが、それはどこの国も同じです。日本の中だけにいると、その魅力に気づきにくいものですが、外の視点を通して自分たちの地域の良さを再認識できます。これこそが観光や旅行が持つ大きな力だと思っています。

 私たちはそういうことができる業界にいるわけで、個々で頑張るだけではなく、業界全体で連帯し協力し合いながら盛り上げていけたらと思っています。短期的に「これをやったらどんなリターンがあるのか?」と考えるのではなく、頼られたらまず動く。そうしていれば、いつか「情けは人のためならず」で、自分のところにも何かが返ってくるはずだと信じています。

-ありがとうございました。