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回復順調のオーストラリア、各州の現況と今後の戦略まとめ(後編)

  • 2024年6月11日
西オーストラリア州政府観光局

吉澤英樹氏(日本局長)

西オーストラリア州を23年に訪れた日本人の数は19年比30%減。日本からオーストラリアへの市場全体の平均は上回り消費額も11%増とプラスに転じているが、それでも7月からの新会計年度で日本市場向けの予算は30%減額されることが決まったという。

こうした状況を受けて西オーストラリア州政府観光局日本局長の吉澤英樹氏は、州政府にとって日本は経済上の観点で極めて重要な相手国であるものの、こと観光においては「このままではプレゼンスが確実に下がる」と危機感を吐露。そのうえで、新年度には送客数を突き詰めて伸ばすことによりプレゼンスを維持、向上すると断言した。

具体的には、2019年水準の回復をめざしつつ20%減を現実的な目標と設定。冬ダイヤでの運航再開が決まった全日空(NH)のパース線の利用を促進するほか、地域などの特性に応じてシンガポール航空(SQ)、カンタス航空(QF)、キャセイパシフィック航空(CX)、マレーシア航空(MH)などの便を活用して送客を進める。

特に名古屋以西の地域のテコ入れを課題と捉えているといい、教育旅行やレジャーなどのセグメントごとに最適な施策を組み合わせて数を積み上げていく考えだ。また、トライアスロンなど特定のイベントや目的での渡航にも注目。例えばバッセルトンで開催されるトライアスロンは、約40人の日本人が毎年のように参加。主催者側もあらかじめ枠を用意するほどの定着率で、「こうした層を大切にして少しでも人数を増やせるようにしたい」という。

なお、ワイルドフラワーは引き続き最重要テーマのひとつとなるが、今年は世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)の総会が10月にパースで開催される予定で、オーストラリア政府観光局(TA)のオージースペシャリスト向け特別イベントも10月の開催予定。こうした状況で来年に向けたメディア露出の仕込みが難しい状況となっているため、これから工夫を重ねていくことになる。

ノーザンテリトリー政府観光局

荻原真一氏(日本事務所トラベルトレードマージャー)

ノーザンテリトリーでは、23年6月までの12ヶ月間における日本人訪問者数が4300人だったのに対して来年度はこの2倍以上の獲得を目標に掲げる。具体的な活動方針としては、これまではある程度お金に余裕のある「ハイバリュートラベラー」を中心にプロモーションしてきたのに対し、来年度はターゲットを広げて若年層にも認知向上を中心に働きかけていく。費用を考えると「いきなり来るのはハードルが高い」可能性はあるものの、将来的な渡航に結びつけるための種まきと位置づける。

この背景としては、ある程度以上の年齢では2004年の映画「世界の中心で、愛をさけぶ」もあって高い認知度を得られているものの、年齢が若くなればなるほど認知が下がる状況が確認されているといい、現在はFacebookのみのソーシャルメディアアカウントをInstagramやXなども加え、インフルエンサーの発信力も活用しながら取り組んでいきたい考え。

また、2019年10月からウルルへの登頂が禁止となったことで、その前の駆け込み需要の反動が生じているほか、登れなくなったことをネガティブに捉える消費者が多いことも課題となっている状況。このため、登らなくても楽しめることのアピールにも力を入れていく。このほか、ヴァージン・オーストラリアによるメルボルンとブリスベンからウルルへの国内線開設もすでに旅行会社のツアー造成や催行決定に繋がってきており、今後も積極的に利用を促進する。

このほか、ウルル以外ではキングスキャニオンやカカドゥの紹介にも力を入れていく。ちなみに、TAは5月30日に世界遺産をテーマとしたキャンペーンを開始しており、この中では子どもからの人気が高いあばれる君が起用され、アリススプリングスからウルル-カタ・ジュタ国立公園へ800kmのセルフドライブ旅行をした様子が4篇の動画で紹介されているところだ。

前編はこちら