回復順調のオーストラリア、各州の現況と今後の戦略まとめ(後編)
日本からの海外旅行市場で他国を上回る回復率を誇るオーストラリア。その現在とこれからについて、現地商談会「オーストラリア・ツーリズム・エクスチェンジ(ATE)」の会場で各州・地域の担当者から聞いた最新情報をまとめる今回の記事の後編では、ニュー・サウス・ウェールズ州、ビクトリア州、西オーストラリア州、ノーザンテリトリーを取り上げる。(前編はこちら)
スティーブ・コックス氏(本局CEO)
新堀治彦氏(日本局長)
ニュー・サウス・ウェールズ州では、2023年通年の日本人訪問者数は12.1万人強で2019年比は39.8%減。しかし宿泊数は1.9%減にまで戻しているほか、消費額は12.5%増と2桁増を記録した。
環境としては、日本路線の座席数が昨年末の段階で前年を超えており、関空線もジェットスター航空(JQ)が就航。旺盛な訪日需要を前提としたものではあるが、日本発需要のさらなる回復にプラスであることは間違いない。
観光局としては、昨年アジア太平洋地域での初開催となったサウスバイサウスウエスト(SXSW)シドニーやビビッド・シドニー、シドニーマラソンなどのイベントでの需要開拓に取り組むほか、ナイトタイムエコノミー振興も進める戦略。
このほか、ブルーマウンテンズでの星空観賞やニューキャッスルのアープ蒸留所、タロンガ動物園の宿泊体験など新プロダクトも積極的にアピール。特に2022年に開業した州立美術館は日本人建築家の手によるもので、文化施設への投資としてはオペラハウス以降で最大のプロジェクトとなったとのこと。また、2026年には容量に限界が来ていてカーフューもある現空港を補完する新国際空港も完成予定。ニュー・サウス・ウェールズ州政府観光局CEOのスティーブ・コックス氏は「日本からも路線を獲得できれば」と意欲を語った。
高森健司氏(日本局長)
今回のATEの会場となったビクトリア州。23年の日本人訪問者数は4.8万人とコロナ前の48%減に留まった。他州に遅れを取る結果ではあるが、これについてビクトリア州政府観光局日本局長の高森健司氏は、カンタス航空によるメルボルン線のデイリー化が2023年12月末であったことが一つの要因と分析。24年第1四半期の結果が出れば40%減から35%減程度となるのではないかと期待を示した。
現地では、コロナ禍でもホテルの開業ラッシュが続き、この4年ほどの間に客室数が約2割増加。具体的にはリッツ・カールトンやW、vocoなどが加わって全体で2.6万室ほどに拡大しており、さらに来年にシャングリ・ラが開業予定であるなど今後も引き続き客室は増加していく見通し。高森氏は「イベント開催時に客室不足になるというようなイメージを持たれていたが、そうした状況は解消されつつある」とアピールした。
また、マーケティング活動では、メルボルンを中心に街、ワイナリー、大自然、動物、さらにスキーや湖、海など多種多様な魅力がコンパクトに楽しめる州であることを強調。メッセージが散漫にならないように注意しつつ、旅行会社にとっても旅行を作る楽しみのあるデスティネーションとして働きかけていく。
このほか、ターゲットでは現時点で動きのある富裕層に加えてメディア系ツアーなどにも注力し、インセンティブなどMICEや教育旅行にも力を入れていく。このうち教育旅行では、スポーツなど語学研修や修学旅行以外のプログラムの開発をめざしていくという。
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