APU、来春「サステイナビリティ観光学部」を新設、その狙いと特徴とは-李燕学部長/土橋卓也教授
地域の持続可能性を学ぶフィールドスタディを重視
理論と実践の両輪で主体的に学びスキルを習得
李 結局、人間は同じだということです。先進国でも途上国でも。先入観なしに世界と接してほしいと思います。私自身も人生の半分以上を日本で過ごし、子供たちが進学した大学の教育も見てきましたが、APUの教育にも自信があります。
⼟橋 APUでは異文化同士の食い違いはあります。個人的な意見ですが、比較的国際学生の方が、コミュニケーションを取ろうとします。一方、国内学生の方は、物分かりがいいし、相手の立場を忖度しますが、意見の相違に向き合っていく姿勢がやや弱いような気がします。いずれにせよ、その異なる意見を持つ人たちと折り合いをつけてどのように乗り越えられるかが大切になる。自分の殻に閉じこもるのではなく、対話によって歩み寄り、乗り越えて欲しいと思います。
⼟橋 コロナによって、既存の観光産業が大きなダメージを受けている中で、就職先として疑問視する気持ちは、学生だけでなく、親も持っていると思います。学生と話をするとき、正直に「厳しい業界で、アップダウンが激しい」と言いますが、実際のところ学生の方が冷静に見ています。それでも、観光業で働きたいと考えている学生は、確固たる意志を持っています。
私が大学生の頃は、漠然と大企業に就職したいと思っていただけでしたが、今の学生はそこに価値観を見出していないと思います。フレキシブルな考え方や行動で、多様性を受け入れる体質を持っている。また、デジタル世代である彼らは、ファクトとフェイクを見分ける力は我々の世代よりも持っているので、厳しいコンシューマーでもあると思います。これからの日本社会あるいは国際社会にとって、そういう価値観は大切ではないでしょうか。
李 私は観光産業の専門家ではありませんが、組織という視点から見ると、必要なのは柔軟性だと思っています。日本の問題は硬直性。組織にはイノベーションが生まれる環境を作ってもらいたいと思っています。個人個人は新しいことを作っていく素質があるのに、組織に入ると、決まった枠組みのなかで伝統的なことしかできないのは非常に勿体ない。組織として、そういう人材を受け入れて、失敗も評価するような寛容な環境作りが必要なのではないでしょうか。中国では、政治体制と関係なくデジタル化が進んでいるのは、そういうところが大きいと思います。
⼟橋 人間は太古の昔から旅をしています。旅に対する人の本能は消えません。形が変わるにしても、観光産業は伸びていくだろうと思っています。現在、世界中に様々な対峙の構造があります。これは、実際に相手に対面で会わないと解決できないものではないかと考えています。その点からも、旅行・観光産業が社会に貢献できるところは非常に大きい。新しい観光の価値を創出するような人材に期待しています。